![](https://apcas.org/wp-content/uploads/2021/02/project_banner_kenko1st-1.jpg)
- 1. プロジェクト背景(農業分野)
- 1.1. 農業分野における課題
- 1.2. 活動のキーワード
- 2. プロジェクト目標とアクション
- 3. パートナー
- 4. プロジェクト成果
- 4.1. 2024年プロジェクト進捗
- 4.1.1. ■循環型農業技術の普及と協力農家との連携強化
- 4.1.2. ■Kenko1st Organicのブランド構築と販売強化
- 4.1.3. ■健康的なライフスタイルの提案とプロモーション
- 4.1.4. ■新たな商品やサービスの開発
- 4.2. 2021年~2023年プロジェクト成果
- 4.3. 2020年プロジェクト成果
- 4.4. 2019年プロジェクト成果
- 4.5. 2018年プロジェクト成果
- 4.6. 2017年までのプロジェクト成果
- 5. 関連データ(レポート・書籍)
- 5.1. ■公益財団法人日本国際協力財団解散記念誌レポート(2023年)
- 5.2. ■有機農業と慣行農業 土と作物から見る (松中照夫 著/農文協)(2023年)
プロジェクト背景(農業分野)
農業分野における課題
スリランカは近年、経済危機、社会不安、自然災害など、幾多の困難に直面しており、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けた道のりは、依然として険しい状況です。
特に、2022年以降の深刻な経済危機は、スリランカ社会全体に暗い影を落としています。外貨不足、物価高騰、燃料・食料不足、医療サービスの低下など、国民生活は多方面から圧迫され、多くの人々が苦しい生活を強いられています。世界銀行の発表によると、2023年3月時点でスリランカの貧困層は570万人に達し、人口の22%に相当します。2022年には貧困率が12.3%だったことを考えると、わずか1年で貧困層が倍増したという深刻な状況が浮かび上がってきます。
こうした経済危機の影響は、特に農村部に深刻な打撃を与えています。
スリランカでは、労働力人口の約25%が農業に従事しており、農業は国の基幹産業と言えます。しかし、GDPに占める割合は10%未満と低く、農業セクターの生産性の低さが長年の課題となっています。これは、伝統的な農法への依存、灌漑施設の老朽化、農薬や化学肥料の過剰使用といった要因に加え、市場アクセスの低さ、中間業者による搾取、農業担い手不足、気候変動の影響などの問題が複合的に絡み合っているためです。
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活動のキーワード
- 化学肥料の高騰への対応(補助金の削減、資源価格の上昇)
- 小規模農家の営農知識の不足(作物栽培の知識、適切な肥料の使用方法、経営知識、記録付け等)
- 気候変動によるリスクの増大(洪水や干ばつの発生、リスク管理)
- 土壌劣化(化学肥料、連作障害)と循環型農業普及の必要性
- 農家間ネットワーク(仲買との関係性)、物流網の未整備(鮮度保持)
- 有機産品や健康的な食品のブランド化・差別化
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プロジェクト目標とアクション
農家の継続的な収入向上には、正当な価格で販売できる販路チャンネル・独自ブランドが欠かせません。そこで、「スリランカの持続型農業を育成し、健康的な食生活を提案する社会的企業」として新たな食品ブランド「Kenko1st Organic」を2018年に立ち上げ、今日まで事業を継続してきました。
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1. 循環型農業技術の普及と協力農家との連携強化
持続的な農業を推進するため、化学肥料に過度に頼る既存の農業、稲作単品種の経営から脱却し、栽培の手間はかかっても、人や環境にできるだけ負荷をかけない「循環型農業」を推進し、地域の特性に合った農作物栽培、健康維持に資する食品加工技術の普及を行います。
※なお、化学肥料の安定的な入手、農薬の適正使用が難しいというスリランカの地方農家が置かれた状況から、養分の地域循環を主とする有機農業の普及とブランド化を追求しており、化学肥料や農薬の使用を否定するものではありません。
2. Kenko1st Organicのブランド構築と販売強化
「Kenko1st Organic」では、供給元である契約農家やメーカー(地域的には、アヌラーダプラ、プッタラマ、キャンディ、ヌワラエリヤ、バドゥッラ、モナラーガラ、ハンバントタ、コロンボの8県)に対し、公平で安定的な買取制度を整備し、野菜、果物、豆、米、スパイスなどの農産物や乳製品、はちみつ、キトゥル、アーユルヴェーダハーブ、ナッツ類などの加工品の販売を行っています。現在、400を超える品目、100を超える取引先があり、そのネットワークが着実に増加中です。より多くの人に安全で新鮮な食品を届けられる身近なオーガニックブランドを目指し、コロンボ市内の実店舗、スーパー、EC販売などの販売チャンネルを通して、お客様に日々商品を届けています。
また、日本など海外への販売にも着手し、楽天市場での小売販売、イベントなどでもKenko1stの商品が取り扱い可能になりました。今後とも日本の皆さまにスリランカの魅力的な商品をお届けできるように努めていきます。
3. 健康的なライフスタイルの提案とプロモーション
WEBやSNSを通して、スリランカでも社会課題になっている生活習慣病や肥満の問題などに対し、食事のバランス、野菜や果物摂取の重要性を発信しています。また、Kenko1st Organicの認知度向上の一環で、研修に参加している日本人の学生インターンにも加わってもらい、コロンボ市内のスーパーで商品紹介や試食のプロモーションも実施しています。
4. 新たな商品やサービスの開発
新分野として、スリランカの伝統医療である「アーユルヴェーダ」の植物原料を活用したハーブティーなど新商品の開発を進めています。アーユルヴェーダ植物原料についても専門機関と共に調査と成分分析を進め、日本への輸出可能性を模索しています。
パートナー
【活動助成】公益財団法人 日本国際協力財団(JICF/2024年3月助成事業完了)
【活動連携】ペラデニヤ大学農学部、JICA北中部州地場産業振興事業、ACC21, MUSACO, Good Market, アーユルヴェーダ庁
【技術助言】平石 年弘(たい肥化技術/明石高専教授)、松中照夫(土壌学/酪農学園大学名誉教授)、チャリンダ・ベネラーガマ(作物学/ペラデニア大学教授)、サラットゥ(農業経済学/ペラデニヤ大学農学部教授・学部長)、クマーラ・シンハ(作物学/ルフナ大学教授)
【デザイン】谷本 天志(デザイナー/ブランディング)
プロジェクト成果
2024年プロジェクト進捗
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■循環型農業技術の普及と協力農家との連携強化
農業技術については、引き続きペラデニヤ大学農学部と連携し、自家圃場に加え、連携しているコロンボ市周辺、キャンディ、アヌラーダプラの農家を中心に、フィールドスタッフが農家を巡回し、栽培技術のフォローアップ、課題の収集、市場動向共有などを行っています。
また、JICAによる北中部州を中心とする「北中部州地場産業振興事業/Local Industries Development Program in North Central Province」とも関係者や専門家と積極的に技術やノウハウの共有を行い、地域全体の農業技術の向上や市場アクセスの改善を連携して進めます。
■Kenko1st Organicのブランド構築と販売強化
政府の財政再建が進む中、付加価値税の引き上げの影響も大きく、市場環境は難しい状況が続いていますが、約10名のスタッフと共に、有機農産品の販売、厳選した加工食品の販売を継続しています。特に取引のある大手スーパーでは、店舗スタッフによる商品の陳列忘れで商品が購入される機会を失っているケースがあるため、定期的に売り場に足を運び、陳列の確認を行うようしています。また、資材価格の上昇で、加工品も全体的に販売価格を上げる必要が出ていますが、できるだけ手に入りやすい価格に抑えられるようパッケージ等の見直しを行っています。
学生インターン研修の受け入れ機会が増えており、若い世代のフレッシュな感性や行動力をお借りしながら、スーパーなどでKenko1stのプロモーションと共に、有機農業に関するイメージ調査、顧客からのコメント収集を研修の一環として行っています。
(1)スリランカ国内での販売
スリランカ国内での取り扱い品目のページ(詳細)を作成いたしました。
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(2) 日本での販売
日本への輸出業務も本格的に開始しました。日本向け商品リストを掲載した専用のWEBサイトも作成しました。
さらに、日本の提携商社(K’s Trading社)のご協力を得て、「楽天市場(Tomo Shop)」での販売も開始しています。K’s Trading社では、日本国内の小売り向けの卸販売も小ロット対応していますので、小さな規模のお店での販売やイベントなどでKenko1st商品の取り扱いを希望される方は、問い合わせメールフォームより、お気軽にご連絡ください。
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■健康的なライフスタイルの提案とプロモーション
InstagramなどのSNSを活用して、Kenko1stブランドの構築に加え、安全な食品やバランスの良い食生活の必要性、より持続的な農業技術の紹介などを幅広く行っています。
■新たな商品やサービスの開発
2024年の新商品として、アーユルヴェーダのハーブを使用したハーブティー「AyuBe (アーユービ)ハーブティー」を開発いたしました。ページ上で質問に回答してもらい、アーユルヴェーダのドーシャ(体質)を簡易的に判定し、それに合わせたハーブティーを購入いただける仕組みです。
ドーシャ判定ができる商品専用ページも作りましたので、ハーブティーに興味をお持ちの皆さまは、ぜひご覧ください。
今後もアーユルヴェーダの持っている新たな可能性を追求し、日本の皆さまの健康維持やリフレッシュにお役に立てる商品開発を目指します。
2021年~2023年プロジェクト成果
1.零細農民の生計向上支援
コロナウイルスの感染状況は一進一退が続きましたが、Kenko1stでの販売を継続しつつ、フィールドスタッフが受益農家の農地を巡回し、フォローアップを継続しました。一方で、政府の債務不履行に起因する経済混乱、インフレによる停電の頻発や燃料の不足(写真はガソリンを入れるために並ぶ人の列)、さらには、大雨による洪水なども頻発し、大変厳しい中での事業継続になりました。
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2. 農産業の組織化・ブランド化支援
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安定的な生産体制を強化し、有機農産物の質と量を確保するために、昨年に引き続き、自家農園(冷涼な気候を生かした高原野菜や果物等)、契約農家、小規模農家(カドゥウェラ市、バウラーナ村、ACC21が支援するUWWOとの連携を強化)との連携を強化しました。
また、国際有機規格の継続のためには、年に数回の視察受入れが必要であるため、農家への指導と共に認証継続のための調整手続きやサポートを行いました。さらに、Kenko1stで取り扱う農産品の安全性を広く共有することを目的に、残留農薬検査や添加物・混入物の検査を定期的に実施し、積極的に顧客に対して公表し、カスタマーサポートの質とスピードの向上を目的にスタッフへの研修も実施しました。
改善が急務の生産体制については、生産管理システムを導入し、栽培から販売までの情報を一元管理し、効率の良い栽培計画、小売・卸売の計画づくりを行いました。その上で実際にシステムを活用し経験値を増やしながら、販売量の最大化と需供のバランスをうまく取れるようにノウハウの蓄積を進めました。
一方で、コロナ感染の影響が当面続く見込みから、対面式のイベント参加が難しいことを前提に、オンラインを活用した広告や啓発に力を入れ、グーグル広告やFacebookの有料広告を活用し、新規顧客の獲得と共に、Instagram、Facebookで健康や食育に関する公益的な情報発信を行い、新たなファン層の拡大につなげます。さらにオンライン販売の強化策として、自社のウェブサイトによる販売システムの確立と宅配サービスとの連携によるオンライン販売強化にも注力しました。
さらに、スリランカ大手スーパーへの卸販売も進めながら、日本への輸出にも着手し、より広範に販売先を開拓し、当事業を安定軌道に乗せられるように取り組みを進めました。
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3.有機肥料の生産と供給
コンポストおよび液肥生産についてモニターしつつ、必要に応じてフォローアップを行いました。
2020年プロジェクト成果
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コロナウイルス感染拡大の影響により、2020年3月下旬にスリランカ全土でロックダウンが発令され、その後、4月、5月と継続されました。その後、感染者が多く発生したコロンボを含む西部州限定で外出禁止令が継続されることなり、移動制限、出社人数の制限等、様々な制限がかかる中、経済活動が停滞し、当活動にとっても非常に厳しい状況が続きました。ロックダウン中は全ての公共交通機関がストップし、今まで使用していた輸送手段がほぼ使えない状況となりました。そのため、独自にトラックを借り上げ、自ら輸送するしか方法がなくなった時期もありました。その際にも、政府当局から出される許可証が必要となり、この許可を出す機関も警察、郡の事務次官オフィス、県の事務次オフィス、公共ヘルス事務所に短期間ですぐに変わるため、その対応に右往左往する結果となりました。また、気候の急激な変化により大きな打撃を受けることが近年増えているため、生産地の分散に加え、各農家でこれらのリスク管理をどのように行うかが課題となりました。
1.零細農民の生計向上支援
契約農家数の増大と共に栽培地域が増えたことで、より安定した生産基盤が出来上がりつつあると考えています。地域的に見ると、アヌラーダプラ、プッタラマ、キャンディ、ヌワラエリヤ、バドゥッラ、モナラーガラ、ハンバントタ、コロンボの8県において生産がされており、天候・病害虫・輸送問題等のリスクも分散され、安定的な供給が可能となりました。小規模農家も上記の各県に分散していますが、栽培技術が定着したこと、どの作物をどのくらい販売できるか理解が進み、各農家からの供給量も比較的安定してきました。
2. 農産業の組織化・ブランド化支援
今期は野菜パウダー、カシューナッツ、蜂蜜レモン、ライムピクルスの新製品をKenko1stブランドとして販売開始しました。さらに、搾りたて野菜ジュース、調理惣菜も数種類販売を開始し、野菜、果物の廃棄量を減らす取り組みを進めました。顧客への野菜の配送に関しても、自社配送だけでなく、スタッフの不足や感染リスクの軽減効果も考慮し、オンラインショップの購入者への配送を代行してくれる「PickMe(ウーバーイーツのスリランカ版)」との連携を開始しました。
また、8エーカー(約3ヘクタール)の自家農場では、多品目の栽培を続けています。特に付加価値の高い作物として、ブロッコリー、カリフラワー、ズッキーニ、ナス等を集中的に栽培しましたが、ちょうど収穫時期となった4月~6月がロックダウンの影響で作物の輸送が出来ず、地元キャンディのお店に販売するしかなくなってしまいました。当然、地方都市では需要がない野菜であるため、非常に安く販売するしかない状況でした。ロックダウン解除後、新たにグリーンハウス(日本のようなビニールハウスではなく、メッシュを全面に張ったネットハウス)での試験栽培も開始しました。今後さらに付加価値の高い有機農産物の栽培を連携先と模索したいと考えています。
さらに包材についても、ビニール袋を使わない方向性を今後もきちんと打ち出すことが重要であると判断し、デザイナーの谷本天志氏(美術家・デザイナー)にも参加してもらい、パッケージデザインの再検討を行いました。包材業者とも協議や試作を何度も繰り返し、ドットが配置されたオリジナルデザインの紙袋の完成に至りました。
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3.有機肥料の生産と供給
生ごみ処理の問題に苦しむカドゥエラ市のゴミ処理場に対して、現地の気候や風土に配慮した生ゴミの堆肥化技術を日本の専門家と共に考案し、現行の方法より効率的に有機肥料を生産できるようになりました。また、それらの有機肥料を近隣農家に提供し、活用してもらいました。
※当初は、カドゥウェラ市を対象とし、生ごみ処理場で生産されるコンポストを活用した全市的な肥料供給体制を市役所と模索しましたが、政治的混乱や洪水被害などもあり、当初よりも活動規模を縮小しました。
2019年プロジェクト成果
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1.零細農民の生計向上支援
循環型農業を行っている農家に対して継続的にフォローアップを行っていますが、できる限り農家自身で問題を解決してもらうことを目指し、直接的な支援は極力控えるようにしました。特別な病害虫の発生時、および、栽培技術で大きな課題が発生した場合には、フィールドスタッフが現地訪問し、指導を行いました。多くの農家が循環型農業技術を活用し、有機栽培を続けていますが、不安定な天候の影響は、農家の経営に深刻な影響を与え続けています。近年は、雨季・乾季のサイクルが変わり、例年以上に雨や日照りが続く現象が各地で起こっています。
前期に引き続き、ヌワラエリヤ地域、キャンディ地域、ガンパハ地域、アヌラーダプラ地域の有機農家からの仕入れも行いました。継続的な現場の視察、有機PGS認証取得の手続きも行い、生産物の安全性に関してもモニタリングを行いました。ある地域が天候不順で不作の際でも、その他の地域では収穫ができることが多く、契約農家の増加と地域の分散化をさらに進めたいと考えています。今後も引き続き、他の小規模農家や自家農園における栽培量を増やし、緊急的な仕入れ先として、複数の契約農家を確保できるような関係づくり、供給体制の構築を行っていきます。
新たな栽培品種についても、希少性の高い品種を選定し、栽培実験を進めました。ズッキーニに加え、ブロッコリー、カリフラワー、イチゴなどの栽培も行っていますが、課題は、露地栽培での病害虫への適切な対応であり、蛾や蝶が卵を産み付けるのを早い内に防除できないと、その後の害虫対応はかなり難しいことです。コスト的にすべての作物をグリーンハウスで栽培できないため、現実的な手段の確立が急務となります。
2. 農産業の組織化・ブランド化支援
ブランドとして、「Kenko1st」の表示から「Kenko1st Organic」へ転換を図り、ロゴも一新して、Organicを前面に押し出したブランディングを展開しました。オリジナルブランド商品も徐々に増えてきており、パッケージの統一化を進めることで、スリランカ市場への更なる「Kenko1st Organic」のブランド浸透が期待されます。また、契約農家、連携農家の数が増加し、さらに生産地域も拡大したことで、より安定的な供給ができるようになりました。今までは、各生産者から生産状況や収穫予測などを電話などで聞き取り、注文を出す方式で行ってきましたが、今後販売量や連携農家がさらに増えれば、各生産地の生産状況の把握から販売量の予測までをこのアナログな方法で行うのは限界があると考えています。そのため、アプリやウェブサイトを活用した生産管理システム、販売システムを構築する必要があり、どの様な形が望ましいか検討を行っています。
また店舗では、什器の設置場所、ディスプレイの仕方、販促ポップの活用等、より快適に買い物ができ、スタッフも効率的に作業できるような改善を日々行っています。販売スタッフに関しても、産地情報や健康効果等、商品特性について幅広く学ぶ機会を設け、接客技術の向上を通して、顧客との信頼関係をさらに高められるように取り組みを進めました。
今期は新たに、ヨーグルト、飲むヨーグルトをKenko1stブランドとして販売を開始しました。スリランカにおいてヨーグルトは「甘い食べ物」であり、無糖・無添加ヨーグルト製品がないため、酪農事業を進めてきたキャンディ県のヨーグルト製造会社と連携し、Kenko1stブランドの無糖・無添加ヨーグルトを新規開発しました。販売商品は、「無糖・無添加ヨーグルト」、「飲むヨーグルト」、「微糖・無添加ヨーグルト」、「飲むヨーグルト」の4種類となっています。
3.有機肥料の生産と供給
生ごみ処理の問題に苦しむカドゥエラ市のゴミ処理場に対して、現地の気候や風土に配慮した生ゴミの堆肥化技術を日本の専門家と共に考案し、現行の方法より効率的に有機肥料を生産できるようになりました。また、それらの有機肥料を近隣農家に提供し、活用してもらいました。
※当初は、カドゥウェラ市を対象とし、生ごみ処理場で生産されるコンポストを活用した全市的な肥料供給体制を市役所と模索しましたが、政治的混乱や洪水被害などもあり、当初よりも活動規模を縮小しました。
2018年プロジェクト成果
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1.零細農民の生計向上支援
引き続き、技術指導の支援を必要としている西部州カドゥエラ市、および、中部州キャンディ県の小規模農家に対して継続的に技術定着フォローアップを行い、今まで同様、農産物の買取も行いました。栽培方法、資材利用の改善、ペストコントロールに関する知見の共有は、引き続き、当事業の現地農業専門家であるルフナ大学クマーラシンハ氏の協力も得て継続的なアドバイスを行いました。
2018年はとにかく天候不順に悩まされた年でした。循環型農業技術の移転自体は、ほぼ終わっていますが、それらの技術を活用しても解決できない問題(例えば、雨や日照りが極端に長期間続く、害獣被害の拡大等)が多々発生しました。今後は、通常の露地栽培の技術だけではなく、グリーンハウスの活用も視野に入れて、より持続可能な栽培方法を確立する必要があると考えています。また、より付加価値の高い作物種へと段階的に栽培種の転換を図っており、具体的には、ブロッコリー、カリフラワー、ニンジン、パプリカ、ズッキーニですが、これらは買取額も高いため、農場の収支を安定させるためにも転換を急いでいます。
2. 農産業の組織化・ブランド化支援
ヌワラエリヤ地域、キャンディ地域の有機栽培農家に加え、ガンパハ地域の有機農家からの購入も開始しました。現場の視察を行い、有機 PGS認証取得に向けて手続きを開始することを条件に、段階的に購入量を増やしました。これにより、さらに地域分散が進み、他地域が天候不順で不作の際でも、需要の高い商品の供給が可能になると考えています。
中部州キャンディ県の自社農園およびバウラーナ村では PGS 有機認証は取得済みであり、扱っている多くの農産物に関しては「Organic」として正式に表示できています。また、スリランカ国内でビニール製品の使用規制ルールが導入され、できる限り包装のない形で顧客に届ける必要性があります。また、野菜購入者からも「ゴミが出る」、「環境にやさしい方が良い」などの理由で、個別包装を断るケースも多くあるため、パッケージデザインについて、現状を分析しつつ、検討を続ける必要があります。
3.有機肥料の生産と供給
生ごみ処理の問題に苦しむカドゥエラ市のゴミ処理場に対して、現地の気候や風土に配慮した生ゴミの堆肥化技術を日本の専門家と共に考案し、現行の方法より効率的に有機肥料を生産できるようになりました(1 日に 25~30 トンの処理量)。また、それらの有機肥料を近隣農家に提供し、活用してもらいました。また、同市の養豚農家に設置したバイオガスプラントは2基とも正常に稼働し、農家が液肥・固形残渣の両方を肥料として利用しています。肥料成分分析を行ったところ、肥料成分も良質で安定しており、施肥効果に関しても、農家からの評価も高いものとなっています。
2017年までのプロジェクト成果
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1.零細農民の生計向上支援
当初の西部州カドゥウェラ地域の農家に加えて、活動対象エリアを拡大し、かねてからの農業技術普及拠点であった中部州バウラーナ村、「ナワラトゥナ財団」が活動するサバラガムワ州ケゴール県、「ACC21」が活動するウバ州モナラーガラ県の市民グループ・農家にも連携の輪が広がり、より大きな波及効果を生み出しつつあります。圃場内での自家堆肥や緑肥生産、環境負荷の少ない害虫防除技術が、以前よりも着実に浸透し、無農薬・無化学肥料による循環型農業が各地で実践されています。また、カドゥウェラ地域においても、懸案であった生ゴミ処理場で生産された堆肥の提供が始まり、有機肥料、土壌改良材としての活用が始まりました。
個別農家の収入に関しては、全ての記録付けがしっかりとはできていないため、正確な数字とは言えないものの、自家消費分の換算、買い取り価格から概算して、受益農家では10~30%程度の収支改善(可処分所得の増加)につながっています。多数の受益農家に対して、固定価格での全量買い取りを行っていることもあり、安定的な収入にもつながっています。
対象者数 | 選出農家数 |
初年度(2014):80農家 | 83農家 |
2年目(2015):180農家 | 109農家 (合計192農家) |
3年目(2016):230農家 | 24農家(合計211農家) |
4年目(2017):230農家 | 10農家(合計221農家) |
品種については、生産地の増加に伴い、60品種以上の野菜、15種類以上の果物が販売され、当初の3倍の種類を取り揃えられるまでになりました。種類の増加でより多くの顧客のニーズを満たすことができるようになり、顧客数の増加、一人当たりの購入単価の増加にもつながっています。さらに、中部州バウラーナ村に整備した専用農場では、中山間地の冷涼な気候を生かした高原野菜、日本人が好む野菜栽培も本格化し、販売量の増加、顧客満足度向上に貢献しています。当農場では、有機肥料や有機資材、天然農薬の利用試験も行われ、同国の気候や文化に根差した適性農業技術の研究、技術普及の場としても活用されています。
一方で、有機肥料や資材の適切な利用方法を自己決定できる農家はまだ少数であり、各農家の習得知識や技術レベルは、途上の段階です。定着のためには、当事業の専門家やスタッフが、日本における農業改良普及センターのような役割を担い、現場レベルでの細やかなサポートを継続する必要があります。今後も土づくり、栽培、収穫の各ポイントで、理論に裏付けられた正確な情報を細かく提供し、最終的に「自分で判断し、行動できる農家」の養成につなげたいと考えています。
2. 農産業の組織化・ブランド化支援
「Kenko 1st」「Home Vegetables」ブランドのブランド力強化に関しても、従来の「安全な方法で栽培された新鮮野菜」という付加価値に加え、高原野菜、豆類、米などのバリエーションが増えたことで、より競争力のあるブランドに育ちつつあり、認知度は格段に増しています。コンポストプラントの堆肥、有機肥料、液肥の活用を総合的に進めるため、使用時期や適切な施肥量に関する実証実験を行いました。また、LED照明技術を活かした害虫忌避技術、微生物資材の試験栽培も行っており、有機栽培では難しいとされるキャベツやブロッコリーなどのアブラナ科作物の青虫被害防止技術の実用化も視野に入れています。
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3.有機肥料の生産と供給
明石高専の平石氏に協力いただき、ドレイン管を使用した「たい肥化手法」を共同で考案しましたが、コンポストプラントへの洪水被害(建物や機材への損害)や関係者の人事など政治的混乱から本格生産に遅れが生じました。2017年6月の洪水被害の復旧作業終了後、生ごみからの堆肥生産が再開され、1日20~30トンの生ごみを処理しており、約4トンの堆肥が生産されています。重金属の検査に関しては、民間検査機関に依頼して行っていますが、今まで一度も検出されておらず、現時点では重金属汚染の問題はないと判断しています。一方で、スリランカ国内での重金属検査は、時間もコストもかかるため、現場レベルで簡易的に重金属を検査するシステムを構築した方が現実的であることから、市役所職員に簡易検査方法の技術を移転する取り組みにも着手しました。
また、堆肥の肥料成分の検査も行っていますが、生ごみ原料の差に起因する成分のばらつきが発生するため、肥料成分の調整作業が必要となることから、現時点では、特定の肥料として利用するのではなく、「肥料効果がある土壌改良材」として農家へ提供を行いました。たい肥を使用し、かつ、無農薬・無化学農法で栽培した作物を「Home Vegetables」ブランドで販売する計画も立案しました。
関連データ(レポート・書籍)
■公益財団法人日本国際協力財団解散記念誌レポート(2023年)
当事業の開始から10年に渡りサポートいただいた日本国際協力財団が、2023年の解散に当たり、日本ファンドレイジング協会と共に制作した国際協力事業の観点からの当プロジェクトに関するレポートです。当事業を様々形で支えていただきました財団の皆さまに改めて感謝申し上げます。
■有機農業と慣行農業 土と作物から見る (松中照夫 著/農文協)(2023年)
私たちの学生時代の恩師でもあり、何度もスリランカにお越しいただきフィールド視察いただいている土壌学研究者・松中照夫先生が執筆された最新書籍です。有機農業について特に土壌学の視点から分析がなされており、その長所短所を理解した上で、慣行農業と共存していく視点が記されています。アプカスのKenko1stの活動についても激励を込めて触れていただいています。