【記事】バワ建築に触れ、シーギリヤロックに登る 心震わせるスリランカ旅(朝日新聞/あの街の素顔)
2024.04.26
https://www.asahi.com/and/article/20250426/425580768

野呂美帆さんというフォトグラファーの方の美しい洗練された写真と文章の大人のスリランカの旅行記。
スリランカの文化や魅力に触れている記事で、うれしくなりましたので、僭越ながらページのご紹介まで。
皆さんのスリランカ旅程の参考にぜひしてみてください! ※出典元のサイトをぜひご覧ください
- 野呂美帆 フォトグラファー三重県出身。旅、アウトドア、ライフスタイルを中心に、雑誌、広告などで幅く活動。現在は鎌倉で暮らし …
数年前、本場のカレーを求めて南インドの旅をした。実際に行ってみると目的のカレーが霞(かす)むほど、思いもよらない体験や見たことのない景色、多くの人との触れ合いに毎日圧倒され、感動した。あの時のような、まだ見たこともない何かに触れ、心を震わせ、圧倒されたい。そんな思いで決めた今回の旅。南インドを一緒に旅した友人を誘って、更に南の島スリランカへと向かった。
スリランカへは成田から直行便で約9時間半。インド洋上に位置し、国土の大きさは北海道の80%くらい。スリは“光り輝く”、ランカは“島”。“光り輝く島”という意味を持つ。
雨期と乾期があるものの、1年を通して高温多湿な熱帯地域。また、セイロンティーでも知られるヌワラエリヤなどの地域は標高が高いため朝晩はぐっと冷える。
Day1 長袖を脱ぎ、アジアの夏の夜へ
2025年1月。お正月明け早々の出発。
成田空港を11 時20分に出発し、コロンボ近郊のバンダラナイケ空港には17時30分到着予定。日本との時差は−3時間30分。機内食はカレーだった。バンダラナイケ空港で両替とSIMカードを購入。1,000円=1,856スリランカルピー( LKR、当日のレート)。SIMは20GBで1,300LKRだったので約650円。日本で買うより遥(はる)かに安い。

スリランカでは近年Uberなどの配車アプリが主流になっているという。私たちはその中でも利用者が一番多いといわれる「PickMe」を使ってホテルまで向かった。
ドライバーとの値段交渉やぼったくられたなどの土産話も面白いけど、それはもう南インドで散々体験したので、今回は少々味気ないけど効率性を選んだ。アプリをダウンロードしている間にも次から次へと「ジャパン? タクシー?」と勧誘が止まらない。
そうそう、こんな感じだったなと久しぶりの異国を感じる。

ホテルの近くまで行くと「この先は通行止めだ」と言うドライバー。見ればお祭りのようなイベントが行われていた。初日からディープな光景。日本から着てきた長袖を脱ぎ、一気にアジアの夏の夜へと引きずりこまれていく。
Day2 ”熱帯建築家”の理想郷を訪れて
昨日の夜とはうって変わって、爽やかな日常の朝が広がっていた。
南インドの町並みと似ていて懐かしい感じもするけど、やっぱり新鮮。カメラを持って歩いているだけでたのしい。


バナナをひとつ買った。
ホテルの近くにあったベイクハウスで朝ごはん。ロティにサモサ、コッペパンも目移りするほど種類が様々。いつもなら朝はコーヒーだけどせっかくなので紅茶をいただく。ロティとミルクティーを頼んで2人で420LKR。日本円で200円くらい。安い。

この日はコロンボから車で2時間ほどのベントタという町へ。リゾート地になっていて観光客も多い。
テンビリと呼ばれるキング・ココナツ。その場でカットしてストローをさして、飲み終わったら果肉をすくって食べさせてくれる。この果肉がとてもおいしかった。


ベントタに向かった理由はジェフリー・バワが設計したホテル「ルヌガンガ」があるから。スリランカ生まれのジェフリー・バワは“熱帯建築家”と呼ばれ、その土地が持つ自然の魅力を最大限に引き出した建築物を数多く生み出している。特にリゾートホテルが多く、今ではよく見かけるインフィニティープールもバワが最初に作ったと言われている。
そんなバワ建築の中で最初に作られたのが「ルヌガンガ」。バワにとっての理想郷のかたち。週末を過ごす別荘として使っていたものを今はホテルとして開放している。


とはいえ部屋数は少なく、宿泊費も安くはないので簡単に泊まることは出来ず、1日に3回開催されている見学ツアーに参加した。ホテル見学というよりは庭見学という感じで、かなりの広さがある庭を解説を聞きながらみんなで回る。
白黒のモノトーンを好んでいたというバワ。至るところに白黒のデザインがあって自然との調和が素敵だった。


Day3 ゲストハウスのママからの提案
スリランカは広くて見どころも点在しているので移動に時間がかかる。

中でも覚悟して乗ったのは、コロンボからシーギリヤまでの5時間のバス。日本のような長距離用のバスではなく普通のバス。エアコン付きのちょっといいバスもあるらしいけれど、本数が少ないし時刻表もあってないようなものなので、とりあえず座れそうなバスに乗ることにした。
それほど暑くないので窓を開ければ涼しい。エアコンより気持ちよかったかもしれない。少し寝て、おしゃべりして、外の景色を眺めて、やっと到着と思ったらまだ途中のダンブッラ。そこからバスを乗り換えてまた1時間、ようやくシーギリヤに着いた。
スリランカのバスはどれも音楽がガンガンにかかっていて大きめのスピーカーが完備されている。そしてバス停で止まるということはなく、スピードを弱めるくらい。みんな動いているバスに乗り込むのが上手!

シーギリヤに着いて、今日はもうゆっくり過ごそうと思っていたら、ゲストハウスのママが「ピドゥランガラロックからの夕日がとても綺麗(きれい)だから絶対に行くべき!」と勧めてきた。
ピドゥランガラロックはシーギリヤロックを望む山で、翌朝に行こうかなと思っていた。しかしあまりにも強く勧めてくるので少し休憩してからトゥクトゥクを呼んでもらって向かうことに。

山頂までは30分で登れると聞いていたので余裕かなと思っていたら、まあまあの急登、まさかの大渋滞。みんな夕日の時間を狙ってくる。岩場で滑りそうな箇所があり、慎重になっての大渋滞。
なんとか間に合って、広々とした岩の上で夕日とシーギリヤロックを拝むことができた。
そこにはさっきまでの大渋滞が嘘(うそ)のように、のんびりとした時間が流れていた。ずっとここにいたい。そう思わされる場所だった。強く勧めてくれたママに感謝!
帰りはナイトハイクさながら、不思議な高揚感に包まれていた。

ゲストハウスの隣のカフェで夜ごはん。スリランカでは定番のライス&カリー。カレーを注文したらおかずもたくさん付いてくる。南インドのミールスみたいな感じだろうか。これは豆のライス&カリー。オクラやビーツの副菜がうれしい。
Day4 シーギリヤロックから見る景色

エッグホッパー、キリバット、パパイア、スイカ、パイナップル、ココナツロティ。どれもローカルで定番ばかり。こういう旅先の宿の朝ごはんが一番好き。
エッグホッパーはココナツミルク入りの米粉のクレープに卵を落としたもの。キリバットはココナツミルクで炊いたご飯。ロティに塗ったパパイヤジャムも美味(おい)しかった。


泊まった部屋では、夜に何度か停電するというハプニングがあったけど、シーギリヤの町全体が停電しやすいんだとか。お湯も限られた量を使って最低限のライフライン。自然の中で生活させてもらっているという気持ちがこの町全体から感じられた。
多少の虫にも慣れてきて、日々たくましくなっていく。

この日はゲストハウスのママの娘夫婦と生まれたばかりの赤ちゃん、娘の旦那さんのお母さんが遊びに来ていたらしくとても賑(にぎ)やかだった。そんな輪に私たちも混ぜてもらい、お互い片言の英語で会話をして、最後はみんなで記念写真を撮った。なんとも穏やかな時間。

チェックアウトを済ませ、荷物を置いて、次の目的地まで歩いて向かう。

スリランカでは神聖な動物とされているゾウ。背中に人を乗せて道を歩いている姿も見られた。

向かった先はおそらくスリランカで一番有名な観光地、シーギリヤロック。
昔々、この岩の上には天空の都が存在していたという。しかしその話は決して美しいものではなく、王座争いの末、父を殺してしまった息子がこの岩上に逃げ込んで難攻不落の要塞(ようさい)を築いたという、すべてを知ると少し悲しいストーリー。何千年も前から人間の色んな姿を見てきた岩山。そんな憎しみも喜びもすべてを受け入れてくれそうな大きな大きな遺跡だった。

高所の怖さはあるけどずっと階段なので登りやすい。
途中、リュックのサイドポケットに入れていたバナナをサルに取られた。観光地にいる動物はいつだって賢い。

あっという間に頂上に到着。建物の跡と思われる石やれんがが多く残っていた。

昨日登ったピドゥランガラロックを望む。登っている時は岩が多くてゴツゴツしていたけど遠目に見るとこんもり綺麗な山だった。
シーギリヤロックとピドゥランガラロック、似ているのかと思っていたら見た目も道のりも全く違う。違うからこそどちらの良さも感じることができた。
ちょっと大変だけどせっかくなら両方を味わってほしい。
(「中」に続く)