【報告】ネイリストYouTuber・能田千華さんによるスリランカ出張指導
報告概要
2026年4月20日から24日の5日間、ネイリストYouTuberとして活躍する能田千華(のだ ちか)さんをお招きし、アプカスが運営するThusare Lights Up(TLU)にて対面での技術指導を実施しました。
能田さんは北海道岩見沢市を拠点に、YouTube「ネイル大学」での発信やネイルスクールの運営を通じて、日本全国のネイリスト育成に取り組んでいます。今回は、ご縁があってスリランカへの訪問が実現しました。
5日間のうち4日間はTLUでの指導、残り1日はTLUと連携する政府職業訓練校・Wattegama(ワッテガマ)職業訓練校での出張指導に充てられました。

訪問の経緯:「ネイル技術」と「聴覚障がい」がつながる場所
今回の訪問のきっかけは、TLUのプロジェクトマネージャー・伊藤奈保子さんが、ネイリストたちの技術学習教材として能田さんのYouTube解説動画を活用したいとコンタクトを取ったことでした。その際、能田さんはオンラインでのレクチャーも快く引き受けてくれました。
さらに、能田さん自身のご両親が聴覚障がい者であることから、「ネイルと障がい」という組み合わせに特別なご縁を感じてくださったことも、今回の訪問実現につながりました。こうした縁が重なり、スリランカ現地指導が実現しました。
現地に来てみての率直な印象を、能田さんに聞きました。

全員がすでに上手で、これから課題をお渡しして練習を積み重ねていけば、どんどん技術が伸びるポテンシャルがあると感じました。
施術に時間をかけすぎたり、丁寧さを求めるあまり手に力が入りすぎてしまう点は今後の課題ですが、日本の生徒さんは知らない先生が来ると緊張して遠慮しがちなところがあるのに対し、現地の皆さんは『もっと教えて!』という意欲がすごく高く、人に対するにウェルカムの精神が強いなと感じました。
聴覚障がいのあるネイリストに対し、ジェスチャーを交えながら、ネイル施術の基本姿勢や動作を指導している様子です。
「無理かも」が「できる」に変わった日

何度教えてもなかなか伝わらないと感じることも何度かありましたが、『ここで私が諦めたら彼女たちの限界が決まってしまう!』と思い、絶対に諦めずにコミュニケーションを取り続けるぞ、という気持ちで向き合っていました。
今回の指導で、特に大きな変化が生まれた場面がありました。
ポリッシュの習得が難しいとされていたKasuni(カスニ)が、今回の指導を通じて、ポリッシュだけでなくジェルネイルの施術も習得したのです。
Kasuniは補聴器を使用しており、会話は概ね聞こえています。一方で、外部の人に対して非常に内向的な一面があり、FilingやPolishingの仕上がりも不安定な時期が続いていました。
周囲はジェルネイルの習得をさらに難しいと見ていました。しかし、能田さんによる継続的な指導と「できる」を前提とした関わりが、その前提を変えました。
Kasuniは施術を終えた後、自ら関係者に連絡を取り、「ジェルネイルができた」と報告。
これまであまり見られなかった自発的な質問をするようになり、自分で練習の日課を決める姿も見られるようになりました。


Kasuni自身は、こう振り返ります。


以前はマニキュアを塗るのも精一杯で、ジェルなんて無理だと思っていました。
でも、一度やってみて、先生に『上手ですね』と言ってもらえたことが大きな自信になりました。
『自分にもできるんだ』と思えたことが、一番嬉しかったです。
この変化は、Kasuni本人の成長だけでなく、運営側が持っていた先入観の見直しにもつながるものでした。TLU全体の人材育成においても、重要な示唆を含む出来事となりました。
Wattegama(ワッテガマ)職業訓練校での出張指導
5日間のうち1日は、TLUと連携するWattegama(ワッテガマ)職業訓練校での出張指導に充てられました。同施設は社会福祉局が運営する障がい者向けの職業訓練機関であり、TLUメンバーの一部も在籍しています。
当日はコロンボを午前6時に出発し、ジェルネイルの機材一式を持参して指導を実施。TLUのネイリスト・Yogi(ヨギ)は、事前にオンラインで受けた指導内容をもとに、マグネットネイルの技術を実演しました。帰着は午後10時という、タイトなスケジュールの一日でした。



能田さんは、ワッテガマでの訪問をこう振り返ります。

先生方のハイレベルなホスピタリティと愛の表現力には本当に感動しました。
生徒さんたちもすごく温かくて、しょっぱなから『先生のこと大好きです』と言ってくれたり。
私が教えに行ったはずなのに、なんだかいっぱい受け取ってしまって、すごく癒されたような温かい気持ちになりました。


訓練校では、ランチも準備していただいていました。
能田さんからメンバーへのメッセージ紹介
最終日、能田さんはTLUのネイリスト一人ひとりに向けてメッセージを届けてくれました。

Kasuni(カスニ)へ
とても聡明で、教えられたことをしっかりと噛み砕いて自分の中で消化し、行動に移す力を持っています。
それは高い理解力がないとできないこと。その的確な判断力で、チームを安定させてくれる心強い存在です。

Dilmi(ディルミ)へ
お客さまを自然と笑顔にする特別な力があります。安心感を与えて心の距離をぐっと縮めるのは、彼女の天性の才能。
チーム全体をいつも和やかなムードで包み込んでくれるムードメーカーです。

Darshika(ダルシカ)へ
目標に向かって力強く突き進むエネルギーを持っています。
『技術をしっかり向上させたい』という強い思いがあり、その熱意でチーム全体の技術力を力強く牽引していく頼もしい力を持っています。
また、能田さんはネイリストとしての姿勢についてもこう語りました。

ネイリストはお客さんを喜ばせることが重要であり、単にきれいなプロダクトを作るだけでなく、顧客の満足につながることが求められます。
ぜひ、そこを目指してください。


メンバーから能田さんへのメッセージ紹介

ジェルの適切な量を指一本一本に乗せる方法と、爪の中央を高く仕上げる塗り方が特に印象に残っています。甘皮処理の手順やファイルの角度、塗る順番が、今では自然と頭に思い浮かぶようになりました。
まずは今の技術をもっと完璧にしたいです。正確に、そして美しく仕上げられるようになりたい。それが今の目標です。
Kasuni(カスニ)

ジェルやトップコートで爪の中央を高くする塗り方、ニッパーの持ち方や動かし方、ファイルの当て方、筆の使い方。細かい技術が今でもはっきりと記憶に残っています。マグネットネイルやグラデーションも学べました。
一歩ずつ確実に進めていきたいです。特にグラデーションをもっと練習して、いつか自信を持って『できるようになった』と言えるようになりたいです。
Dilmi(ディルミ)

千華さんに言われて、スピーディーにやることを意識するようになりました。こないだお客さんに施術したとき、速くできるか緊張しましたが、時間内に終えることができました。
練習を続けて、綺麗にはやく施術できるネイリストになって、お金を稼いで家を建てたいです。
Darshika(ダルシカ)
能田さんの今後へのメッセージ
5日間の指導を終えて、能田さんはこう話してくれました。

ぜひ世界に羽ばたいていってほしいなと思います。
障害があるということは、社会に何かを発信するお役目があるのかなと思うんです。
今のアプカスの中だけの活動にとどまって小さくまとまらずに、もっと大きく飛躍してほしいですね。
最後の会話で、『日本でネイリストとして活躍してみたい』『将来サロンの経営者になりたい』と大きな夢を語ってくれたので、やりたいと思ったら絶対にやれるよ!という気持ちで、どんどん前に進んでいってほしいと期待しています。

私はこれまでネイルを学んできた中で、『これが正解ですよ』というやり方だけを見せられて、そこにたどり着くまでの道筋を教えてもらえない経験をたくさんしてきました。
日本のネイル業界のそういう部分をなんとかしたいという思いで、今の活動をしています。
ただ答えを提示するだけでなく、『どうすればその答えにたどり着けるのか』という道筋を分かりやすく示すことを大切にしています。
彼女たちに伝えたように、『自分の限界を決めずにやりたいことをやる、そのために努力する』という心の持ち方も、一緒に伝えていけたらと思っています。


プロジェクト担当者からのコメント

「限界をつくらない」という言葉に、改めて大切な気づきをいただきました。
私たちは無意識のうちに、自分自身や相手に対して「ここまでだろう」と限界を決めてしまうことがあります。しかし、その思い込みが、日々の生活や社会で活躍する機会を狭めてしまっているのかもしれません。今回の研修を通して、そのことを改めて考える機会をくださった千華先生に、心より感謝しています。
彼女たちは、これまでの人生経験が限られていたこともあり、生きていくために必要なスキルがまだ十分ではない部分もあります。しかし、ネイルサロンでの仕事を通して、自分の将来に夢や目標を持ち、ネイル技術だけでなく、人としての力や魅力も少しずつ育んでいってほしいと願っています。
「限界」をつくらず、「時間をかける」ことが、人を育てることの基本だと感じています。
一人ひとりの可能性を信じながら、これからも皆で挑戦を続けていきたいと思います。

今回の研修は、TLUが取り組んでいる障がい者就労支援の方向性を、改めて確認する機会にもなりました。
私たちが現場で向き合っている課題は、目に見える障がいだけではありません。その背景には、幼少期からの愛情や教育環境の不安定さによって、自己肯定感や人との関わり方、仕事への向き合い方といったソーシャルスキルが十分に育まれてこなかったという課題もあります。
そのため、TLUでは技術訓練だけでなく、挨拶、報告、相談、チームで働く姿勢、お客様との関わり方など、社会の中で働き続けるための力を育てることも大切にしています。目に見える障がいへの支援と、ソーシャルスキルへの支援。その両方に丁寧に向き合うことが必要だと考えています。
特にKasuniがジェルネイルを習得し、自信を持って自ら行動し始めた姿は、TLUにとって非常に大きな出来事でした。技術習得だけではなく、「自分にもできる」という感覚を持てたことが、何より重要だったと思います。
今回の経験が、TLUメンバー一人ひとりの将来だけでなく、スリランカにおける障がい者就労や職業教育の可能性を広げていく一歩になればと思っています。
能田 千華さんのご紹介

今回お世話になりました能田 千華さんの活動をご紹介いたします。

YouTube「ネイル大学」:
https://www.youtube.com/@ChiccaNail100
YouTube「検定合格チャンネル」:
https://youtube.com/channel/UCNXsJcjy8YABIotO52j6drg
公式ホームページ:
Instagram(@chiccanail):
https://instagram.com/chiccanail
公式LINE:
アプカスが運営する障がいと雇用分野のソーシャルビジネスのご紹介
■ 聴覚障がい・発達障がいのあるスリランカ女性たちが、美容技術を通じて社会で活躍する場をつくるネイルサロン「Thusare Lights Up」の運営
■ 視覚障がい者が日本式指圧技術を身につけ、社会で活躍する場をつくる指圧サロン「Thusare Talking Hands」の運営


