●地域開発(スリランカ)

循環型農業の普及とブランド構築(農業分野)

 スリランカは古くから紅茶、ゴム、ココナツなどの輸出作物が主幹産業で、全人口の1/3以上は何らかの形で農業に関わっていますが、多くを占める小規模農家の暮らしは大変です。貯蓄や組合がないために強い力を持つ中間業者等の買い手に安値で買い叩かれ、収入が増加しない中で、化学肥料や農薬等の農業資材の価格が上昇しています。さらに近年は、気候変動や水不足の影響が顕在化しており、より不安定な環境下で農業を続けざるを得ない状況が続いています。
 私たちは、栽培の手間はかかっても、人や環境にできるだけ負荷をかけない「循環型農業」に着目し、地域の特性に合った農作物栽培、食品加工技術の普及を行ってきました。2015年には、独自のオーガニック食品ブランド「Kenko 1st Organic」を立ち上げ、コロンボ市内の実店舗、スーパー、EC販売を通して、連携農家の有機農産物(野菜、果物、豆、米、スパイスなど)や加工品(乳製品、はちみつ、アーユルヴェーダ商品、ナッツなど)の販売を行っています。これらの活動を通して、農家の生活の底上げと共に、より多くの人に安全で新鮮な食品を届けられる身近なオーガニックブランドを目指して、日々歩みを進めています。2022年からは、日本への輸出販売にも着手しています。

【活動のキーワード】循環型農業(有機農業)、有機肥料づくり、コンパニオンプランツ、営農改善、ネットワーク化、食品加工、ブランド構築

視覚障がい者の指圧師養成と指圧院の運営(障がい者分野)

 

 世界保健機構(WHO)の発表によると、世界の人口の10%が障がい者であり、その8割は開発途上国に住んでいます。スリランカでは、2000万人の国民に対して約40万人が、視覚に何かしらの障がいを持っており、そのうち15万人が全盲であると政府は発表しています。また、視覚障がい者が一人でもいる世帯の88%が、1日の収入が2ドル以下の「貧困層」であるというデータもあり、「障がい」と「貧困」が密接に関係している事が伺えます。
 また、知識不足が原因となり、適切なケアが行われないことで、視力が悪化し致命的な障がいを抱えてしまうケースも数多く、障がい者に対する根強い偏見が存在し、当事者やその家族が、社会から孤立してしまうケースも多くあります。
 私たちは社会福祉省や眼科医と共に、当課題への取り組みを開始し、2013年にスリランカの視覚障がい者が働く指圧サロン「トゥサーレ・トーキング・ハンズ(Thusare Talking Hands)」をコロンボ中心部に開業しました。開業後は、日本の指圧技術専門家の協力の下、指圧技術の向上、カリキュラムやテキストの整備、語学トレーニングにも取り組んでいます(2020年2月~22年4月/JICA草の根技術協力事業でトレーニング実施)。平坦な道ではありませんが、いつか日本と同様に、スリランカの視覚障がい者がより専門的な教育を受け、人間的にも経済的にも自立ができる日が来るのを夢見て、私たちは更なる取り組みを進めていきます。

【活動キーワード】障がい者の社会参加、指圧師(あはき師)、サロン運営、教科書とカリキュラム整備、ブランド構築、メガネ配布

負の建築資源を活用した地域ツーリズム振興(建築分野)

 スリランカの中央高地にあるバウラーナ村では、紅茶農園が約30年前に閉鎖されて以来、紅茶生産を生業としていた人々(タミル人)の生活が苦しくなる一方です。紅茶産業の衰退から貧困に苦しむ居住者も多く、空き家や未修繕家屋も年々増加し、今後の長屋群の保全や有効利用を考えると、大変厳しい状況にあることもわかってきました。
 私たちは日本の建築分野の専門家と連携し、この村の紅茶生産労働者の住まいとして建てられた「築100年以上の歴史的な長屋(Line House)」を地域ツーリズムの拠点に再生しました。居住者や近隣住民と協働しながら、旅行者がバウラーナ村の自然や歴史、紅茶摘みやタミル文化を体験してもらい、そこで得られた利益を長屋の保守や地域住民の生活向上事業に有効利用する「スリランカ旧紅茶農園長屋再生プロジェクト(Line House Project)」を実施しています。

【活動キーワード】負の建築遺産、紅茶ワーカー、タミル人文化、長屋再生、地域ツーリズム、体験型ツーリズム

バナナ繊維のアップサイクルブランド「MUSACO」の展開(クラフト分野)

 活動を行っているケゴールは、コロンボとキャンディを結ぶ道路沿いの町、車で一時間ほどの地方都市です。2012年よりこの地域に暮らす障がい者の就労支援と生計向上を目指し、廃棄物として捨てられている「バナナファイバー(バナナの仮茎)」をアップサイクルした工芸品の製作販売する「Musacoプロジェクト」を現地NGOが実施してきました。現在、アプカスが事業を継承し、「MUSACO」を製作する女性グループと並走しながら、グループの機能強化、クラフト技術の向上、ブランド構築支援を行っています。
 日本では、不定期ながら展示会での販売や日本企業のノベルティグッズの製造を行っています。今後の体制強化のために連携企業や個人の皆様も大歓迎です。スリランカの青い空で生み出されるハンドメイドクラフトMUSACOとぜひ繋がってください!

【活動キーワード】バナナファイバー(バナナ仮茎)、アップサイクル、ハンドメイドクラフト、女性と障がい者の雇用、中古サリーの活用

牛銀行方式による小規模酪農の普及(酪農分野)

 長屋再生のプロジェクトの舞台である中央高地にあるバウラーナ村と近隣のコラビッサ村(600名が暮らす村)が、当事業の舞台です。
 この地域に暮らすのは、紅茶プランテーションワーカーの子孫に当たる人々。約8割が貧困の問題を抱えていますが、今回注目した農村開発のキーワードは、中山間地の冷涼な気候を生かした「小規模酪農」です。スリランカ政府も牛乳生産に力を入れたいと考えており、乳製品自給率を50%まで引き上げる目標を掲げており、牛のふんからは、有機肥料として活用できるたい肥が自家生産できるので、土壌の改善効果も期待できます。
 しかし、牛は大変高価であるため、その配布方法を模索する必要がありました。そこで考えた方法が、『牛銀行方式』です。住民の中から乳牛を飼いたい希望者を募り、飼養技術や餌やりのトレーニングと共に牛舎建設のサポートも行い、時間はかかりますが地域全体で持続的に牛を育てていけるようなシステム作りを目指しました。スリランカの紅茶と酪農の現状がわかる「ミルクティ」のようなページ構成ですので、興味のある方は是非ご覧ください。

【活動キーワード】紅茶生産地における小規模酪農、循環型農業、牛銀行、農村開発

自助グループによる女性支援(女性分野)

 スマトラ沖津波での被災に加え、長い間内戦が続いていたスリランカ東部州バッティカロア。UNハビタットと共に、長年の不安定な環境下で暮らしてきた女性(夫を失った女性、家族を養っている女性)を対象に、複数の「自助グループ(Self Help Group)」を立ち上げ、グループ単位での貯蓄、スモールビジネス(付加価値の高い農作物の栽培・加工、家畜飼育、小規模商店、洋裁など)の起業、ライフスキルの相互学習等を定期的に行い、この地域の女性たちの社会的経済的な自立へと繋がるサポートを行いました。SHGでは、私たち含め外部からの支援は極力小さくし、女性たちの「持っている力を引き出す」のがポイントです。

【活動キーワード】内戦被災地、女性支援、自助グループ(SHG)

僻地農村における教育環境の向上支援(教育分野)

 開発途上国と聞くと、NGOが学校建設というイメージを抱く方が多いかもしれませんが、スリランカは少し事情が違います。イギリスの植民地だった等の要因もあり、インフラとしての公教育が一定程度は整っており、設備面での学校が圧倒的に足りないという状況ではありません。特に都市部では、少子化という事情もあり、子どもたちに対する教育熱は相当高く、学校や塾への教育費用を工面するために親たちは多くの代償を強いられています。
 一方で、「地方都市からも距離のある僻地農村地域」、「内戦などの理由でインフラが整わず貧困に苦しむ家庭が多い地域」では、高騰する教育費の支出が難しい家庭が多く、満足に学校に通えない児童もおり、教育の格差がますます深刻化しています。また、こういった地域では、インフラ面でも、政府の予算不足から教室やトイレの施設が整わず、一部青空教室での授業を行わざるをえない学校、公務員制度の問題もあり教職員が足りずに一部の授業が実施できない学校もあります。 
 私たちは、教育支援活動においては、地域の実情をきちんと把握し、もっとも必要なニーズは何かを行政や親、場合によっては教育支援の地域NGOとしっかり話し合った上で、限られた予算内で最も適切な活動内容を決定していきます。また、ハード(施設や学用品)の支援よりもソフト(教師や専門人員の派遣等)の支援が必要と判断すれば、できるだけ柔軟に対応し、支援する側と支援される側がきちんと繋がる「より効率的な教育支援の方法」の在り方を模索してきました。

【活動キーワード】僻地教育、教育格差の緩和、安全な水の整備、ハード支援とソフト支援、参加型開発

環境保全や持続的な環境技術の普及事業(環境分野)

 スリランカの国土の10%は自然保護地域ではあり、生物多様性や固有種に関しても非常に豊かな資源を持っていますが、開発や人間の生活が優先されてしまう現状があり、「野生クマ」ならぬ、「野生ゾウ」との共存のような地域特有の問題もあります。加えて、焼畑農業や薪利用による森林減少などの乱開発の問題、大気や水の汚染問題、近年ではマイクロプラスチックなどのゴミ問題と教科書に掲載される代表的な環境問題は、大概スリランカに存在していると言って間違いありません。また、気候変動の影響も近年は顕著で、毎年のように洪水や干ばつ、地滑り災害が発生し、環境難民も発生しています。
 一方で、環境問題としての現象は同じでも日本とその構造は違い、スリランカの環境問題のベースには「貧困」と「無関心」があります。例えば、ごみのポイ捨てをなくすために、「ポイ捨てをやめよう」とポスターを作ったり(規範的アプローチ)、ポイ捨てに罰金を課したり(法律的アプローチ)しても、日本ほど効果は望めません。それよりも、ごみが資源になる技術(技術的アプローチ)や経済制度(インセンティブ・経済的アプローチ)を導入することが、大きな効果を生み出します。目の前にある貧困や社会課題を改善しながら、同時に環境保全を目指すことが特に重要なテーマです。
 一方で、規制の少なさや欧州や中国からの投資で、日本では見たことのない先進的な環境技術も積極的に導入され、各国が競って技術開発を進める実験場のとしての側面もあり、逆に勉強になるような取り組みも多く存在し、連携できることがきっと多いと思います。今後は、日本の環境技術をスリランカで一緒に試し、現地仕様に改善を重ねていくような試みに力を入れていきたいです(同国での環境系の取り組みをまとめたページを準備中です)。

【活動キーワード】ソーシャルビジネスによる解決 現地に合った環境技術(適正技術) 土壌や水環境保全 分散電源 再生可能エネルギーの実証 BOPビジネス ゴミ問題

●地域開発(日本)

仮設住宅の住環境改善支援(建築分野)

 2011年3月に発生した東日本大震災では、被害が甚大かつ広域だったこともあり、被災者にとって復興への第一歩を踏み出す拠点となる仮設住宅の完成にも時間を要しました。さらに、行政職員も多数被災しており、きめ細やかな行政側のケアが行き届かない中で、仮設住宅への入居が始まりました。
 そもそも災害時の仮設住宅の住環境レベルの低さは、阪神淡路大震災、新潟中越地震の際にも、多くの人によって指摘されていたことですが、2011年8月上旬に気仙沼市本吉町で仮設住宅の住環境調査を実施した所、建設業者によって仮設住宅の“質の差”が出ており、はじめから断熱に優れたペアグラス窓を使用している所もあれば、東北の気候には適さない通常の窓もありました。
 私たちは、建築や環境工学専門家と連携し、適正技術の視点から「安価で手に入りやすい素材を使用し、できるだけ簡単にできるプレハブ仮設の断熱対策」を現場で考案し、その後、資材メーカー、建築学生、ボランティアの力をお借りして、仮設住宅に暮らす皆様に施工支援を行うプロジェクト「仮設住宅の住環境改善活動」を実施しました。
 寒さ対策以外にも、改善の範囲は拡がり、収納、庇の取り付け、ごみ集積所、ウッドデッキ等の共有スペースの改善、共同農園、夏場の暑さ対策等、仮設住宅で少しでも豊かに暮らせるようなアイデアを実際に暮らす皆様の協力を得ながら実証的に検討し、ノウハウ共有も行いました。まさしく、2年間で試行錯誤し続けた仮設住宅の改善支援の実践ページです。

【活動キーワード】仮設住宅(プレハブ)の環境改善、断熱性能の向上、共有スペース改善、適正技術、ボランティアや学生の参加

宮城県における復興支援・交流イベントの実施(コミュニティ分野)

 2012年4月~2014年までの東日本大震災被災エリアでのコミュニティの復興と交流促進を目指した活動記録のページです。
 発災からおよそ1年が経過し、東日本大震災で被災した地域のニーズは、安全と住居の確保から、徐々に生活の質を取り戻すことにシフトしていきました。バラバラになってしまった地域コミュニティを再生すること、長期化が予想される仮設住居での生活を少しでも心地よくすることが強く求められていました。
 私たちの活動は当初は小さなものでしたが、時間を経る中で活動の輪が広がり、多くの皆様が参加していただける活動に成長しました。また、気仙沼市や石巻市の地域住民の皆様のおかげで、家庭菜園や仮設集会所の設置、交流イベントや地域のお祭りとの企画連携も行いました。
 ここで生まれた皆さまの出会いや試行錯誤が、地域復興や次の災害対応時への繋がりになることを願って、活動の記録を当ページで共有します!

【活動キーワード】あかりカフェ、いしのまきあかりシネマ、夜のイベント実施、仮設集会所の整備、学生と地域住民の交流

●災害支援(スリランカ)

スマトラ沖津波支援(2005-09)

 インドネシア・スマトラ沖でマグニチュード9.0の地震が発生し、その直後に大規模な津波がインド洋沿岸10カ国以上の国々を襲いました。スリランカは地震国でなかったこともあり、この大津波への対応が全くできず、海岸部を中心に3万人余りの死者が発生し、約8万世帯が家を失いました。
 一方で、これらの復興支援に対して、巨額の世界的な援助が集まり、いわゆる「援助漬け」の状態が多く見られました。被災者自身にはなかなか適時に適切な支援が届かず、周辺に存在するNGO、政治家、行政機関が潤うような状況が至る所にありました。私たちは、20歳中頃でしたが、大災害の現場で、支援の難しさ、必要なものが届かないもどかしさを痛感する経験となりました。
 善意をうまく届けることは難しい。私たちが「支援とは何か?」について考える原点とも言える経験となりました。

中部州地滑り被災地支援(2007-12)

 2007年1月、スリランカ中部州ワラパネ郡で、大雨が原因で同時多発的に地すべり災害が発生しました。16名の方が亡くなり、800軒の家が全半壊し、3900家族が避難キャンプでの生活を余儀なくされました。毎日30℃近くになる環境下での過酷なキャンプ生活の後、地すべりの再発の危険が高い地域では、住みなれた家に戻ることは許可されず、水すら満足に得られない土地へ多くの住民が強制的に移住することとなりましたが、この災害はインド洋大津波という注目度の高い災害の陰に隠れ、世界はおろか国内からも支援の手はほとんど届かない「名もなき災害」となりました。
 私たちは、孤立無援に近い被災地の現状、人々の苦しい生活を目の当たりにし、日本への帰国を取りやめ、アプカスとしてNPO法人格を取得して継続的な支援活動を行う覚悟を決めました。
 結果として、発災直後から当被災地の支援に関わることとなり、試行錯誤を重ねる中で多くの事を学びました。日本から資金的なサポートもあり、トイレ建設、教育支援、衛生向上、仮設住宅建設、移転住宅の建設支援、さらには、生計向上支援まで、5年近く活動を続けることができました。

【活動キーワード】災害緊急支援、ニーズ変化への対応、名もなき災害、参加型復興支援、セルフビルドによる復興住宅づくり、中山間地における生計向上支援

内戦・洪水被災地支援(2009-2011)

 スリランカでは,2010年12月の記録的な豪雨により,洪水が発生、各地に大きな被害がもたらされました。100年ぶりという記録的な集中豪雨に見舞われた地域もあり、特に東部(特にトリンコマレ県、アンパラ県、バティカロア県)で大規模な人的・物質的被害が発生、同地域の内戦避難民(IDP)キャンプに滞在する32万人以上も被害を受けました。当会が活動していた北中部州ポロンナルワ県でも、2度に渡る豪雨災害に見舞われ、建設中だった地下貯水タンクに大きな被害を受け、この地域の生徒も被災しました。これらの事態を受け、私たちはパートナーNGOと連携し、子どもへの緊急物資支援、生計向上の支援事業を行いました。
 また、内戦で被災した地域で、難民キャンプの子どもへの学用品支援、子ども会の運営など通してメンタルケアを行うプロジェクトも実施しました。

●災害支援(日本)

東日本大震災緊急支援活動(2011)

 東日本大震災の甚大な被災状況を受け、2011年3月末より、PARCIC、IVY、いしのまき環境ネットと連携し、被害の大きい石巻、南三陸町、気仙沼市周辺の特に支援の行きと届いていない地域、避難所に焦点を当て、ニーズに基づいた支援物資の配布、地域間の支援ギャップを埋めるための活動を行いました。当ページでは、当時の活動記録と共に被災地の物資ニーズの変化についても共有いたします。