プロジェクト背景(クラフト分野)

地方都市における小規模生産グループの課題(スリランカ サバラガムワ州ケゴール県)

 

 

 活動を行っているケゴールは、コロンボとキャンディを結ぶ幹線沿いにあり、コロンボから車で一時間ほどの地方都市です。2012年より、公益財団法人 日本国際協力財団(JICF )が、現地NGOと共同で、特にこの地域に暮らす障がい者の就労支援と生計向上を目指し、農園の運営、食品加工に加え、仏デザイナーDorothée Etienne氏と共にバナナファイバーを使用した工芸品の生産販売「Musacoプロジェクト」を行ってきました。
 その後、当会がソーシャルビジネスとして行っている「Kenko1stプロジェクト」との連携が期待できることから、現地の事業マネジメントをアプカスが引継ぎ、Musacoメンバー、プロジェクトマネージャー村井美恵子氏(JICF職員)と共にMusacoのブランド構築と販売促進を行う体制に移行しました。
 しかし、2020年3月から世界的なコロナ感染拡大の影響で、当事業も大きな影響を受け、入国制限の影響でマネジメントと技術をサポートする村井氏の現地派遣がなかなか叶わず、現地チームとのリモートでの調整を余儀なくされました。2019年にオープンしたMusaco直営店も、観光客の減少や水災の影響で閉店を余儀なくされました。
 そのような逆境が続きましたが、活動に賛同いただいた日本企業、ショップ、アーティスト、市民の皆さまから様々な協力をいただき、当活動を底支えいただきました。特に、株式会社シーキューブ様からは、オリジナルエコバック制作依頼をいただき、経済停滞でスリランカ国内での販売が厳しさを増す中、Musacoの安定的な活動継続に繋がっています。

実を収穫したら地上50cmほど茎を残して伐採。
残された茎は、放置や野焼きされる廃棄物に

 

 現地のグループ運営は、一歩進んで二歩下がるような状態が続いています。本来は、活動を継続する中で生産チームの技術やチームワークが向上し、より質の高い生産体制が出来上がることを期待していたものの、事前に決められた商品の規格や作業方法を守らなかったり、検品も甘く納品前に急きょ日本側で作り直すような事態が発生しています。
 こういった課題をチームでうまく共有する中で改善に繋げられれば良いものの、残念ながら、(スリランカの地域開発案件でもよく発生する)他の仲間や環境のせいにするような言動がコアメンバーに見られます。幸い、日本からまとまったオーダーをいただけていることに加え、2023年1月から3月まで、プロジェクトマネージャーの村井が現地渡航できることになりましたので、粘り強く新たな商品開発、生産体制の強化、メンバーのプロ意識の向上を図っていく予定です。

活動のキーワード

  • バナナファイバーのアップサイクルによるクラフトブランド「Musaco」の展開
  • 地方都市の女性を中心とした生産グループの機能強化と自立運営
  • 障がい者グループへの手仕事の創出と社会参加の促進

プロジェクト目標

【現地生産グループの基盤強化・エンパワメント】

Musacoの製品の販売を通して、自主的な運営の下、ソーシャルビジネスが継続され、障がい当事者とその家族を含むメンバーたちの生計向上、やりがいのある手仕事の提供につながる。また、今まで廃棄されてきたバナナの茎の繊維の有効利用(アップサイクル)を通して、廃棄物の低減や資源の有効活用が図られる。

【日本およびスリランカでの販売促進】

「Musaco SriLanka」が、スリランカ発のアップサイクル・ブランドとして両国で認知され、多くの人に着目され、ソーシャルファームとして事業が継続される。

【展示会参加やワークショップ等の開催】

バナナの茎の廃棄や貧困に関わる社会的課題へ対する認知を拡げ、より多くの人々の参加やネットワークによって、課題解決が促進される。また、クラフト制作を体験しながら、実務的な視点から国際協力やスリランカのSDGs事情について理解を深める。

ブランド「Musaco」のビジョン

私たちは、ハンドメイドのバナナファイバープロダクトが持つ可能性と多面的な価値を追求します

ムサコとは、スリランカの言葉で「バナナの茎」

ムサコのメンバーは、現在およそ25名おり、女性や障がい当事者とその家族が主なメンバーです。しかし、バナナの茎から繊維を取り出すのも決して簡単な作業ではありません。バナナの収穫後のバナナの茎を作業場に運び、タケノコの皮のように一つ一つ皮をはぎ、 熨して、不要な成分を除去しながら繊維を取り出します。このバナナの茎は、今まではバナナの実の収穫後、野焼きされたり、薬品処理されたりして、廃棄物として処分されていた厄介者でした。

ムサコから、ファイバーを取り出し、縒り上げる

熟練しても縒り上げられるのは1時間に4~5m程度。最も難しいのは、「ジョイント部分の調整」です。根気が必要なこの作業は、本当に好きな人しか続ける事ができません。女性たちは、より細く均一になるように糸を縒り上げますが、障がいのある方が縒り上げる糸はどうしても『個性的』に。その『不均一という個性的な糸』を生かしたプロダクトづくりにもチャレンジしています。

縒り上げた糸から製品を作る

縒り上がったハンドメイドの糸が、さらにハンドメイドで美しいMUSACO製品に生まれ変わります。 時間をかけてバッグなどもひとつひとつ丁寧に作ります。私たちは、これらのクラフト製品を適正な価格で製品を販売し、持続的な生産体制の確立を目指すと共に、生産から販売プロセスの中で、メンバー個人、グループの能力向上に努めています。

アクション

【現地生産チームの機能強化(スリランカ)】

1.ケゴール女性グループの生産体制と運営能力の強化
1-a: 生産を行うプロダクトと生産体制(役割分担)の整理
1-b: 受発注から納品までの各プロセスの課題整理と改善
1-c: グループの生産技術の向上と検品体制の強化

【Musacoブランドの販売拡充とネットワーク構築】

2.スリランカにおける販路の拡大とプロモーション
2-a: スリランカ向けプロダクトの整理
2-b: プロモーション用リーフレット(英語版)の制作
2-c: 取扱店舗の拡充に向けた営業活動(Kenko1stとの連携強化)

3.日本における活動周知とネットワーク構築

3-a: 日本向けプロダクトの整理
3-b: ワークショップ「Musaco Musubu」の開催
3-c: プロダクト、委託販売先の拡大に向けたプロモーション活動
3-d: 企業とのタイアップ受注に向けたプロモーション活動
3-e: 商品改善のためのリサーチ、ネットワーク構築

パートナー

【活動助成】公益財団法人 日本国際協力財団(JICF)

【活動連携】村井美恵子(JICFプロジェクトマネージャー)、 株式会社シーキューブ

【デザイン】谷本 天志(デザイナー/美術家) Dorothée Etienne(戦略的デザイナー・フランス) Elisa Padrón(グラフィックデザイナー・スペイン)

Musacoプロダクトリスト(2022年)

Trinket Bowl

ハンドメイドのぬくもりを感じるナチュラルな風合いのボウル型の小物入れです。
キーやコイン、アクセサリーや腕時計を入れたり、使い道はアイデア次第です。

Bottle Holder

ショルダーの長さ調整や取り外しが可能なナチュラルな風合いのボトルホルダーです。
Lサイズは1リットルのペットボトルが入ります。

Semi-Circular Case

ハンドメイドのぬくもりを感じるナチュラルな風合いの半円ポーチです。
裏地にはスリランカの民族衣装のサリー(新品・中古)を使用しています。

Macramé Sholuder Bag

天然素材のバナナ繊維とジュート生地を組み合わせたナチュラル感溢れるシリーズです。
たっぷりサイズのトートバッグとショルダーバッグを一緒に持ち歩くのもお洒落です。

Recycled Paper Shopping Bags

障がい当時者が縒り上げる個性的な糸で、リサイクルペーパー袋をリサイクルショッピングバッグに変身。スタンプ(シール)はオリジナルでの制作も可能です。

Key Tags

きれいな糸を作る時にどうしても出てしまう細かいバナナ繊維をボール状にして、刺繍糸を巻き付けてキータグにしました。

ハンドメイド糸「ムサコの村のムラのある糸」

ムサコの村のムラのある糸

バナナ繊維を手作業で紡いだ「ムサコの村のムラのある糸」。

ハンドメイドであるため、編み手の個性が出るムラのある糸です。天然素材のバナナ繊維からできた張りのある糸は軽くて丈夫。ご自身で作品を作られる方、ブランドのパーツでの利用はいかがでしょうか?時間をいただければ、オーダーメイドも可能です。

Original Order

企業や団体様のオリジナルグッズ開発(エコバッグや雑貨制作)で製作実績があります!
2022年制作 中古サリーを活かしたオリジナルエコバッグ
2022年制作 中古サリーを活かしたオリジナルエコバッグ
華やかなサリーの色合いが映えるエコバックです(参考価格780円/2022年9月)

企業や団体様のオリジナルグッズ開発(エコバッグや雑貨制作)で製作実績があります。
「買って、支える。」みんなにうれしい支援の形。 オリジナルグッズをMUSACOと共に!

MUSACOの活動や商品に関するお問い合わせ

活動報告

2022年プロジェクト報告

【現地生産チームの機能強化】

1.ケゴール女性グループの生産体制と運営能力の強化

 コロナ禍で2020年5月末に帰国してからリモートでの活動が続きましたが、2022年5月にようやく現地渡航することができました。報道の通り、スリランカは政治的経済的に混乱が続き、特に燃料不足は深刻で、日々の生活のも大きな影響が出ています。
 そのような中で、各メンバーの役割の明確化、品質管理の責任者の選出、Google Docを使用した売上や在庫情報の見える化を目的とし、2年ぶりの現地滞在がスタート。MUSACOが目指すゴールを皆で共有するために、シンハラ語でのオンライン会議も複数回行い、メンバーだけのミーティングも自発的に実施されました。
 また、サリーエコバッグの大口注文を日本からいただいたこともあり、MUSACOの活動が再始動していることが知られ、活動に興味を持った15名程の村の女性達がトレーニング(エコバッグ制作含む)に参加してくれました。今後、新しいメンバーが、「糸づくりトレーニング」で脱落しなければ、活動の活性化が期待できます。

【Musacoブランドの販売拡充とネットワーク構築】

2.スリランカにおける販路の拡大とプロモーション

富裕層や観光客をターゲットとした、都市部コロンボで毎週土曜日に開催される「グッドマーケット」への出展を予定していましたが、国の状況が落ち着き観光客が戻ってくるまで、出展は見送る事にしました。その間、新たな試みとして、日本の障がい者グループとMusacoとのコラボ製品の開発ができないか検討したいと考えています。

3.日本における活動周知とネットワーク構築

 3年ぶりに7月に開催された東京ビッグサイトでの「ハンドメイド・イン・ジャパン・フェス2022」の出展では、たくさんの方にMUSACOの活動や商品をお伝えする事ができました。また展示会では、京都の商社から、和装に似合うバッグ作りの提案を頂き、まずは試作などを開始しました。
 また「フェアトレードフェスタちば2022」にも出展し、千葉市国際交流課の方が参加されているフェアトレードグループLINEの準メンバーになりましたので、今後イベント参加の機会が増えそうです。また、日本の障がい者施設に依頼した「機織り品」からコラボ製品のサンプル作りをするなどして、引き続き可能性を探っています。

2021年プロジェクト成果

【現地女性グループの機能強化】

1.ケゴール女性グループの生産体制と運営能力の強化

  コロナウイルス感染拡大の影響により、プロジェクトマネージャー村井のスリランカ渡航が延期される状況が続きました。MUSACOは、リモートでのコミュニケーションでは安定した品質の商品づくりが難しく、オンラインショップも稼働を見合わせています。
 一方日本国内では、ブランディングやコンセプトの見直しをデザイナー谷本氏と共に行い、日本国内向けの新たなリーフレットを作成しました。また、ブランドとしても、MUSACOと日本の障がい者施設を結びことで新たな商品が開発できないか連携先を探しました。

【Musacoブランドの販売拡充とネットワーク構築】

2.スリランカにおける販路の拡大とプロモーション

 2021年9月上旬から、スリランカ政府はワクチン接種済み旅行者の受け入れを開始しましたが、その後、感染者が一進一退を繰り返す状況が続き、国の経済危機も重なって、都市部での活動は難しい状況でした。

3.日本における活動周知とネットワーク構築

 ブランドの整理、WEBやリーフレットの作成、ワークショップ開催、制作キットの販売に向けた準備を行いました。村井が千葉在住であることから「フェアトレードちば2022」に参加したのを契機に、千葉市発のフェアトレードショップ&カフェでの委託販売がスタートし、フェアトレードワークショップも開催しました。今後は行政との関わりも視野に入れて、活動に取り組みたいと思っています。

Musaco Project リーフレット(2021年版)

2020年プロジェクト成果

【現地女性グループの機能強化】

1.ケゴール女性グループの生産体制と運営能力の強化

 現地カウンターパートから独立したMUSACOは、活動エリア内に小さな自分達のお店を開店しましたが、新型コロナウイルス感染の影響により2020年5月末にプロジェクトマネージャー・村井が日本に一時帰国。外出禁止令等も発令されたため、経済活動は停滞し、数ケ月後にはMUSACOのお店は閉店となりました。
 リモートでの活動を余儀なくされる中、MUSACO の Instagram と Facebook 、WEBサイトの整備を行いつつ、日本からのリモートでの技術指導で、安定した品質の商品供給を実現できないか、試行錯誤を重ねました。具体的には、MUSACO ウェブサイトにメンバーズサイトを作成し、商品を正確に制作するための指示書を図面や写真を用いて掲載するなどしました。

【Musacoブランドの販売拡充とネットワーク構築】

2.スリランカにおける販路の拡大とプロモーション

 コロンボ市内での活動を行う予定でしたが、長引く新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けたため、活動ができませんでした。

3.日本における活動周知とネットワーク構築

 MUSACO のオンラインショップ構築や日本国内からの注文対応を行いましたが、販路拡大については、現地の生産体制がまだ不安定なため、活動を見合わせました。日本の企業から、SDGsの取り組みの一環としてエコバッグの注文をいただきました。

2019年までのプロジェクト成果

【現地女性グループの機能強化】

1.ケゴール女性グループの生産体制と運営能力の強化

 2013年にスタートしたバナナファイバーの活用による地域開発プロジェクトは、2015年にフランス人戦略的デザイナーDorothée Etienne氏とスペイン人グラフィックデザイナー Elisa Padrón 氏の協力もあり、当プロジェクトで生産されたクラフトを「MUSACO」ブランドとして販売することになりました。しかし、生産は開始されたものの、現地カウンターパート(障がい者支援の就労支援グループでしたが、日本からの支援に対して強く依存していました)の生産体制や組織ガバナンスの課題が改善されず、当初計画していた新商品開発やプロモーション活動までに至らず、活動が停滞した状態が続きました。
 この現状を打破すべく、 2017年より村井がプロジェクトマネージャーとして現地滞在し、MUSACOの活動が自立が見える段階まで伴走する役割が託されました。メンバーの意識改革を行うために、生産販売を行う事業所として公的に登録し、既存製品の改善、新製品開発、マーケティング活動を積極的に行いました。しかし、ようやく活動がうまく回り始めてきた2019年4月、スリランカで同時多発テロ事件が発生し、観光業が大打撃を受けることになりました。海外からの観光客のお土産としての販売を目指していたMUSACOのマーケティング活動にも大きな影響がありました。
 その後、MUSACOは、活動の足かせになっていたカウンターパートから独立する道を選び、ケゴールの国道沿いに小さなクラフト販売店舗を持つことができました。店舗は、メンバーが交代制で店番をしながら運営し、地域の女性や障がい者に糸づくりワークショップを行う中で責任感や連帯感が生まれました。

【Musacoブランドの販売拡充とネットワーク構築】

2.スリランカにおける販路の拡大とプロモーション

 MUSACOの活動エリアであるケゴール近郊の観光地へ営業を行い、ショップのオリジナル商品を制作するなど一定の成果がありました。国営の大手ギフトショップ(Laksala)では、コロンボ本店での評判次第で各支店へ商品を陳列できるお話をいただきました。都市部で人気のベアフットの担当者のデザイン案も制作しました。また、SNSを通じて紹介のあったコロンボのアパレルショップ「Tropic of Linen」でのクリスマス POP UP SALEへ参加し、こちらのオーナーとコラボ製品企画の話が持ち上がり、10種類以上のサンプル制作に対応しました。Instagramからの問合せが増加し、スリランカでビジネスを展開している外国人や都市部のカフェ、ビーチエリアや観光地のギフトショップ、ゲストハウス(Kenko1st)との取引も開始しました。しかし、2019年4月の自爆テロ事案により、こららの取引も大きな影響を受けることになりました。

3.日本における活動周知とネットワーク構築

 スリランカ国内のマーケットをターゲットにしている状況で、特に日本へ向けてのプロモーションは行なっていませんでしたが、2015年頃に「Musaco Sri Lanka」のFacebookは立ち上がっており、更新頻度を増やす事でスリランカ在住の外国人からの問合せが増え、更にInstagramを導入した事でスリランカの旅行代理店やスリランカで草木染に取り組まれてる日本人女性からの問合せが入る様になりました。