プロジェクト背景(教育分野)

教育分野における課題

 スリランカの教育分野の課題としては、「都市部と農村部の教育格差問題」がまず挙げられます。「都市部」では学校への子どもの有償送迎サービスがあるほど熱心に教育が行われている一方、道路や電気などのインフラ整備が遅れている「僻地農村地域(交通アクセスの悪い地域、プランテーション農業地区、内戦の影響が多かった地域等)」では、先生のなり手が不足し、一部の授業がキャンセルされたり、親の仕事を手伝うためや教科書代、制服の仕立て代などの自己負担分を払えないために学校に通えないような子どももいます

 スリランカで貧困層と呼ばれる人々の家計支出を見てみると、貯蓄はない上で、80%の支出が食費、衛生・健康への支出が3%、教育への支出は1%であるという統計があり、貧困層では教育費の支出の余裕がないことがわかります。この数字からも、生まれた家の所得や学習環境で、仕事の選択肢が決まってしまう傾向が強くあり、教育機会の不平等や貧困層の固定化に繋がっています。また、スリランカ政府が出している識字率の統計は90%以上となっています。この数字を高いか低いか判断するのは難しいですが、実際に僻地のフィールドを回ってみると、識字能力に問題がある子どもが相当数いる現状が確かにあります。

【農村部・内戦被災地域の教育環境】農村部では、一部の授業は教室(青空教室)がなかったり、机やいすがないため地面で学習する学校、栄養面が懸念される給食、洪水被災地では大事な文房具が水害で使えなくなってしまった光景が実際にありました。

アクションの類型(教育支援事業のまとめ)

国際協力活動での教育支援事業の進め方(APCAS in Sri Lanka版)

【ハード支援に関わる教育関連事業】

1.教育施設の新築や改修
1-a: 校舎の新設(学校や幼稚園/一部住民参加型)
1-b: 校舎の修繕・一部改修(住民参加型)

2. インフラの整備
2-a: 上下水道(井戸、トイレ、雨水タンク、水道濾過フィルター等)の整備

3.必要な物資資材の配布
3-a: 被災地(洪水および内戦)被災地での文房具の配布
3-b: 小学生への視力検査の実施とメガネ配布(ヌワラエリヤ県)
3-c: コンピュータの設置

【ソフト支援に関わる教育関連事業】

4.子ども会の運営や学ぶ機会の創出
4-a: 子ども会、英語クラスの創設と運営
4-b: 子ども向けの環境教育、防災知識、衛生知識の向上

5. 先生、親、政府機関へのサポート

5-a: 視覚障がい者職業訓練機関のサポート(指圧師養成)と就労支援
5-b: 就学支援、先生の派遣費用の支援
5-c: 親の生計向上支援(農業、食品加工等)と並行した教育への理解と子どもへのサポート体制の強化

教育支援活動実績

パルゴッラ幼稚園と図書館の建設、カタガムワ小学校の井戸建設

スリランカ北西部州ニカワラティアは、首都から車で3時間ほどの小さな地方都市です。古くから溜池灌漑用水を利用した稲作を中心に生活を送ってきた地域ですが、近年の気候変動や局地干ばつ、燃料などの物価高騰の影響で収入が激減している世帯も多く、特に周辺地域は、子どもの健全な成長や学習にとって十分な環境が整備されていない現実があります。

ニカワラティア市街地から、砂埃舞う悪路を1時間ほど車で行ったところに「パルゴッラ幼稚園」はあります。以前幼稚園のあった土地から一方的に立ち退きを余儀なくされ、政府の開発放棄地を教育省から提供されただけで、遊具もトイレもない施設環境で、30度の炎天下の中、保育士と地域住民が協力し合って、28名の園児が通う幼稚園が細々と運営されていました。教育省や保護者と話し合いを続け、教育を行う十分な施設すらない中で運営を行うパルゴッラ幼稚園の園舎建設を曹洞宗 東光山 曹源寺(橋本大心基金)からの支援によって実施することが決まりました。

 上記幼稚園と同地域にある「カタガムワ小学校」では、70名の子どもたちが日々の勉強をしていますが、当小学校も“僻地”かつ“小規模校”という背景から、行政から忘れ去られた学校の一つで、校舎・井戸・トイレなど基本的な設備すら整っていない状況が長年続いていました。その中でも「飲料水」の不足は、深刻な問題でした。暑さが厳しい中で勉強する子どもたちにとって、飲料水はまさに命に関わる問題で、今までは学校から離れた民家の井戸で水を汲んでいましたが、好きな時に行けるというわけでもなく、のどの渇きを我慢しながら授業を受ける子どもも多くいました。

地域北西部州ニカワラティア
受益者パルゴッラ幼稚園/約28名の園児とその親
カタガムワ小学校/70名
活動キーワードパルゴッラ:幼稚園の建設 図書館の建設
カタガムワ:共用井戸の新設
活動助成/年曹洞宗 東光山 曹源寺
橋本大心 基金(2010年-11年)
カウンターパートサングラマ

1. パルゴッラ幼稚園舎および図書館の新築、トイレと貯水タンクの整備

幼稚園舎および図書館の新築、トイレと貯水タンクの整備が行われ、専門性の高い作業を除き、地域住民が積極的に建設や運搬作業の全面的なサポートを担当してくれました。当施設は、幼稚園や図書館としての役割のみならず、週末は日曜学校や集会所として利用され、地域交流の中核施設として利用されています。

2. カタガムワ小学校への井戸の設置

 2010年2月に井戸建設に着手し、地域住民との協力で、4月には直径3.5m深さ8mの井戸が完成し、そこに簡易的な貯水タンクと水道を設置しました。これらの給水設備は、学校及び保護者によって自主的に管理運営されていきます。現在、カタガムワ小学校では、敷地内でいくらでも水を飲めるようになり、はしゃぎながら水を飲む多くの子どもの笑顔が印象的でした。

※スリランカ側での数々の問題を超えて当事業を支えてくれました橋本大心氏のご厚意に、この場を借りて深く感謝申し上げます。

ガルカダウェラ幼稚園の建設

ガルカダウェラは、地滑り被災地域がある事務所の現地スタッフが「気になっている場所がある」ということで、初めて足を運んだ地域でした。車では直接行けず、最寄りの居住地区から徒歩で悪路を40分ほど歩いた場所に集落がありました。この地域には、約150世帯が暮らしていますが、その内の50世帯はそもそも行政から居住を許可されておらず、不法占有の状態であるということでした。雨漏りする曲がったトタンや古い木材で作られた粗末な小屋で暮らす多くの住民。地滑り被災はしていないものの、そもそも行政からの支援がほとんどないため、被災者の移転地区よりもさらに厳しい環境下での暮らしているという印象でした。実際、150世帯の内、25世帯は政府の生活保護制度(日本のような制度には程遠いものの)の対象になっている世帯とのことでした。

 当該地域を訪れ、住民の集会に参加した所、「地域の幼稚園の園舎の老朽化がひどく、なんとか支援してもらえないか」という切実な要望を受け、その実現のために動き出しました(日本人スタッフ訪問時は、集落の男性の一人が、ヒョイっとジャックフルーツの木に登り、完熟した果実をごちそうしてくれました。今でもそのおもてなしは、豊かさを感じる忘れられない思い出です)。一方で、村の女性が先生となり、子どもたちに文字の書き方を教えていた姿は、まさしく僻地教育の原風景ともいうべき光景でした。

地域中部州ヌワラエリヤ県ワラパネ郡
受益者30名の子どもおよび150世帯の地域住民
活動キーワード幼稚園の新設
助成/年曹洞宗 東光山 曹源寺
橋本大心 基金(2010年-2011年)
カウンターパートなし

1.ガルカダウェラ幼稚園の建設

 建築資材を提供した上で、農繁期や雨季の兼ね合いもあるので建設スケジュールを調整しつつ、集落の男性が中心となり、参加型で幼稚園の建設工事を進めました。特に雨の影響で資材の搬入が遅れており、積極的に牛を使った輸送に切り替える方向で調整が進みました。幼稚園は無事完成し、地域の教育・集会拠点として活用されています。

マドゥーラ学校校舎建設と学校菜園の設置

スリランカ中部州ヌワラエリヤ県ワラパネ郡は、首都コロンボから東に約200キロ離れた丘陵地域に位置し、道路・橋・学校などの社会基盤の整備も遅れている地域です。ワラパネ郡では2007年1月に集中豪雨のため、大規模な地滑りが発生し1万人以上が被災しました。

当該地域の学校の多くは、校舎・トイレ・図書室などの設備不足が顕著であるにもかかわらず、行政の予算不足や学校へのアクセスの悪さも重なり、外部からの支援がほとんどない状況が続いています。当該地の教育レベルを示す指標としては、全国統一中学卒業試験の合格率が27.8%(2007年度)と、全国に92ある教育地区の中で、91番目の結果を残しており、1番の地区であるキャンディ83.3%と比べるとその差は歴然としており、教育界における“格差”の広がりが顕在化した場所でもあります。

 マドゥーラ小中高校は、1289名の生徒が通うワラパネ郡マドゥッラ村にある唯一の学校ですが、慢性的な教室不足のため、9学年(15歳)の生徒156名が、暑い日は30度近くになる中で「屋外授業」を余儀なくされています。特に、雨季の時期には授業の継続が難しくなっており、その時期は生徒が登校することができず、学力の低下へとつながっています。また、保護者のほとんどは零細農民であり、経済的な問題が優先となり、子どもの教育への関心が低い問題もあります。さらに、栄養失調の子どもがいることも報告されており、子どもの健全な成長を妨げ、学習活動にも影響が及んでいます。

地域中部州ヌワラエリヤ県ワラパネ郡
受益者Madulla小中高校/女子657名 男子632名
活動キーワード校舎の建設
学校菜園の整備
助成/年大阪コミュニティ財団「がっこう基金」(2010年)
カウンターパートなし

3つの教室から成る校舎の建設し、生徒の学習環境の改善と学校菜園による子どもの栄養改善を行います。また、事業全体を通して、保護者・教職員のやる気を引き出し、問題解決に向けた能力を高め、同地域の教育の質を向上させます。

1.マドゥーラ学校の校舎建設
レンガ造りのスリランカにおいて標準的な校舎を建設します。建設は、学校と地域住民から成る学校発展委員会が中心となり、計画作り、物資購入、管理も彼らが積極的に関与する参加型で進めます。また、保護者の建設作業への協力を促し、課題解決への関心も高めて行ければと考えています。

2.学校菜園の運営
0.5ヘクタールほどある学校の敷地を有効利用し、学校菜園を始めます。トウモロコシ、キャッサバ、バナナ等の作物を栽培し、収穫したものを低学年の子どもに提供します。科目の1つである「農業」の授業でも菜園を利用することにより、生徒の学習にも役立ちます。また、保護者の協力も得ることにより、学校側との連携が強化されます。学校菜園は、雨季が始まる10月後半から11月にかけて開始し、早いもので3カ月後に収穫を行います。

3.保護者・教員のエンパワーメント
 僻地と貧困という問題が絡み合い、保護者や教員の教育への関心が低下しつつありますが、その根底には、何事にも“受け身の姿勢”というマインド問題があります。様々な課題に対して、「行政が何かしてくれるまで待つしかない」という姿勢ではなく、問題解決のためにできることを探す能力を高め、継続的な問題への取り組みを促すように当事業を進めます。

農村の子どもへのコンピューター普及活動

 当該地域は、首都から南東部に7時間離れたウバ州の僻地農村地域です。当法人は、2008年より有機農業技術の普及を中心に地域開発を当該地域で進めてきましたが、近年、スリランカでもコンピューター&インターネット技術が急速に普及し始めましたが、それは一部の大都市に限られており、当該地域のITリテラシーは10%未満です。活動地域にはコンピュータ技術を学ぶ場所はなく、PCを見たこともない子どもがほとんどの状況で、今後、IT技術の普及に伴い、よい仕事に就くためにはコンピューター技術の有無が問われるという現実があるため、都市と農村のコンピュータ普及の格差が、直接的に子どもの未来の可能性を阻害する要因となっています。

地域ウバ州モナラーガラ県シーヌックワ地区
受益者189名の子どもおよび100名の地域住民
活動キーワードコンピュータの設置 インターネット利用方法の普及
助成/年KDDI財団(2010年)
カウンターパートグリーンムーブメント・オブ・スリランカ

1.コンピュータの設置と基礎クラスの実施(子ども対象

 スケジュールに多少のずれがありましたが、専門のインストラクターを常駐させ、4グループが「コンピュータ操作基礎コース」を終え、最後の試験を見事に通過しました。その後は、空き時間を利用しながら実践力を高めていきました。最後の1つのグループは、一部の子どもが親の仕事の手伝い等で一定期間通えなくなってしまい、試験の実施がずれ込みましたが、無事コースを終えることができました。結果的には、189名の子どもがコンピューターの基礎を学び終えました。

2. コンピュータの有用性に関する講習会の開催(親対象)

 子どもへのレクチャー開始に先立ち、パソコン教育に関する保護者の意識の向上を目的に保護者を対象として「コンピューターやIT技術の重要性」に関する講習会を開きました。2時間の講習会終了後、「今まで、自分とは関係ないし、それほど必要でないと思っていたが、その重要性や子どもがそれを学ぶことの大切さが理解できた」という声が多く聞かれるとともに、「できたら、自分達もコンピューターを学びたい」という要望も出たことから、別途対応しました。

フィールドノート】コンピュータを今まで見たこともなかった子どもたちが、今では基礎的な知識・技術を身につけ、PCソフトで文章作成等ができるようになりました。子どもたちは、新しい 世界を実体験し、その興味・関心をますます高め、意欲的に学習を続けています。電気、通信環境が悪く、日本との電子メールでの交流はできませんでしたが、文書作成ソフトとプリンターを使って、当会の現地スタッフと手紙のやり取りは、することができました。
 また、言語教育面から見ても大きな効果がありました。スリランカで利用されているコンピューターは、全てOSが英語です。そのため、初めてコンピューターを触る子どもたちは、英語の知識も同時に学ぶ事になり、子どもたちの“言語を理解する力”は非常に強く、あっという間に基本的なコンピュータ用語を覚えていきました。コンピューター技術習得と英語学習は親和性が高いということを改めて知ることとなりました。

英語クラブと補講クラスの実施を通した学業支援活動

 2008年に発生した地すべり被災者移転地区の5移転地で「英語クラス」を開催し、予想を超える子どもたちがクラスに日々通ってきており、学習面でも、コミュニケーションの面からも充実した運営がなされています。しかし、長期的な英語能力の向上を図るには、今後も継続的な支援が必要であるとの関係者一同の認識を得ているところです。また、英語に加え、高校進学に関する総合的なサポート体制も多くの保護者から要望が寄せられています。

同地域は、地理的な問題等により適切な教員の配置がなされず、高校進学に対して必要不可欠な科目(数学・化学・英語)も充分に教えられていないのが現状です。そのため、高校入試試験結果も全国でワースト2位という状況です。進学はその後の就職に大きく影響するため、長期的な地域の発展を考えると、子どもたちの進学が非常に重要だと考えています。また、“僻地”という理由で基本的な授業すら受けられない状況は決して望ましいものではありません。

 また、英語は、他民族国家(多言語)における共通語としての高い公益的な役割があることに加え、多くの企業が英語スキルを採用の必須条件としていることからも、子どもの将来にとって最重要な教科である言っても過言ではありません。現状では、当該地域のほとんどの子どもは、まだ各年齢の英語の平均到達度に達していないのが現状です(2006年度の全国一斉高校入試試験の結果を見ると、移転地区のあるワラパネ地域の合格率は25.8%であり、全国ワースト2位に位置。これは、1位のコロンボ地域は71.6%)。

地域中部州ヌワラエリヤ県ワラパネ郡
受益者およそ350名の子どもと保護者
活動キーワード英語クラスの開催 高校入試の学習サポート
助成/年国際ボランティア貯金(2011年)
カウンターパートワラパネ郡事務所 ワラパネ郡地域教育事務所 

1.英語クラス参加者の募集と運営
8地区において、それぞれ35~45名の子どもを募集します。子どもの年齢や英語力の差によって2~3のグループに分け、講習を行いました。なお、各地区において週2回の英語クラスを開催しました。
(ワラパネ郡デッロワッテ、エゴラカンダ、ニルダンダーヒンナ、ダダヤンポラ、ロックランド、パディヤペレッラ、ウダプッサラーワ、セールピティヤ地区)

2.高校入試試験に向けたセミナー実施
3地区で、2つの教科について8回のセミナーを実施します。土曜日等、学校が休みの時にセミナーを行い、各地区において約50名の生徒が参加しました(ヌワラエリヤ県ワラパネ郡ニルダンダーヒンナ、パディヤペレッラ、ウダプッサラーワ地区)。

フィールドノート】英語クラスに時折足を運ぶと「Good Afternoon, How are you? Where are you from?」と子どもたちが次から次へと質問をしてきます。中には恥ずかしがって話をしない子どももいますが、多くの子どもが学習した英語を少しでも使って見たいという意欲が感じられました。あるクラスの先生は、「このような僻地の学校には通常英語の先生が来ないため、子どもたちは英語を学習する機会を失い、そのため英語に対する“恐怖心”のようなものが出来上がり、大きくなってから学習することが精神的にも難しい。小さいうちから少しでも英語に慣れる必要があり、その意味でもこの英語クラスは子どもたちにとって重要である」と述べていました(2012年3月)。

ヌワラヤヤ小学校の校舎建設、近隣小学校の水道インフラ整備

スリランカ中部州マータレー県ウィルガムワ郡は、山々に囲まれワスガムワ国立公園に隣接している自然豊かな地域であると同時に、陸の孤島として、様々なアクセスが行き届いていない僻地農村地域でもあります。特に、教育分野のギャップが顕著となっており、設備不足・教員不足の学校が当たり前のように存在し、親の教育への関心の低さから、子どもを学校に送らないケースも多く見られます。そのような背景から、全国統一中学卒業試験の合格率は 24.61%(2006年度)と「全国92教育地区の中で92番目」という結果を残しています(2005年度も92番目であり、2年連続でスリランカで一番低い合格率を記録しています)。

 当プロジェクトは、共にスリランカで子どもの教育支援に取り組んできたシッダールタ・チャイルド・ディベロップメント・ファンデーション(SCDF)と共に活動を行います。SCDFは、僻地における教育問題に取り組むべく、当該地に地域事務所を構え、2008年2月より同地区の13校を対象に教育環境の改善事業を展開しています。現在、ソーシャルワーカーやカウンセラーを含む7名のスタッフが、貧困などにより学習が困難な子ども150名を対象とした学習サポート、識字率向上および図書館普及、子ども会を通した子どもの社会性向上、そして、親を対象とした啓発活動などを中心に活動しており、活動を進める中で、「トイレがない」「安全な水がない」「学習する教室がない」という地域の中でも特に切実なニーズに直面する小学校の声を聞き、当事業の提案に至りました。

地域北西部州プッタラマ県コットカッチエ郡
受益者ヌワラヤヤ小学校 / 生徒110名
ハドゥンガムワ小中学校 / 783名
プワクピティア小学校 / 91名
活動キーワード学校建設 井戸設置 トイレ設置 
助成/年(財)ひろしま・祈りの石国際教育交流財団(2009年-10年)
カウンターパートシッダールタ・チャイルド・ディベロップメント・ファンデーション

1. ヌワラヤヤ小学校における簡易校舎の建設

当小学校は、生徒111名に対して小さな建物が1つしかなく、勉強する教室が足りない状況が続いていました。親や先生、地域住民が協力し合い土壁の教室を作っていますが、雨風が強い日などは雨漏りがひどく学習が続けられない状態でした。本事業を通して、幅6m×長さ7.5mでレンガ造りの簡易的な校舎を建設しました(簡易的といっても通常の校舎と違うところは大きさだけであり、建物の質等は通常のものと同じです)。

2. ハドゥンガムワ小中学校における井戸の設置

 当小中学校は、生徒783名で比較的大きな学校です。現在、学校には1つの掘り抜き井戸が設置されていますが、老朽化に伴い、地下に埋めてある鉄が錆びて変色し、飲料水としての利用が難しくなっていました。また、設置箇所の問題か時季により水量が下がり飲料水の確保が難しくなっています。そこで、直径2m×深さ8mの井戸を建設し安全な水の確保を行います。また、親や教員たちと、政府予算から給水タンク建設を行うよう共に働きかけを行いました(給水タンクが完成するまでは、「つるべ式」で水をくみ上げて利用する予定です)。

3. プワクピティア小学校におけるトレイ建設

 プワクピティア小学校は、ウィルガムワ地区の中でも最も僻地に位置し、学校までの道路も多くの箇所が壊れており、雨が降ったときは土砂崩れの危険性があり、学校までたどり着けない状況でした。当学校で91名の生徒が現在学んでいますが、トイレが1つあるものの長期間修繕が行われておらず、便器なども壊れ、使用するのが難しい状況でした。本事業では、既存トイレの修繕、および、新しいトイレの建設(2つのトイレを設置した建屋建設)を行いました。

4. 地域の教育ネットワーク強化と教育意識の向上

 すべての建設作業には、親が組織している「学校発展委員会」が中心となりました。また、他の住民も巻き込み、地域全体の重要な活動として進めていくように常駐の現地コーディネーターが、ファシリテーションを行いました。
 SCDFの教育専門家、ソーシャルワーカーが連携し、地域の13校の親と子ども、さらに教員(僻地ではモチベーションが低下している新任教員が多い)も巻き込んで、「なぜ教育が重要なのか?」への理解が深まる啓発活動を展開しました。多くの親たちが零細農家であり貧困の中で生活をしているため、子どもの将来まで考えを巡らせることが難しい現状がありますが、「教育を受けることは、貧困の連鎖から抜け出す一歩である」「教育は、学校だけでなく、家庭の果たす役割こそが重要」という基礎理解をワークショップを通して深め、親の教育への関心を少しでも高めることを目指しました。これらの活動は、2ヵ月に1度程度、各学校で実施し、半年に1度3~4校の親が一箇所に集まり、各学校の課題や子どもたちの状況について意見を交換しながら進めました。

内戦避難キャンプ、洪水災害地での文房具の配布

 長期の内戦の激戦地だった地域、自然災害の被災地域等で、パートナーNGOと共に子どもへの文房具支援を行いました(なお、配布文房具は、輸送費や現地企業を応援するという視点から、現地での購入が基本となっております)。

1.ポロンナルワ県の洪水被災地での学用品の支援(2011年)

地域北中部州ポロンナルワ県Madirigiriya教育区
受益者926名の子ども
Pangurana Muslim Primary School/Palliyagodalla Annoor Muslim Primary School/Mirishena Primary School/Babiyawa Primary School/Pahala Ambagaswewa Junior School/Thalakolawewa Junior School/Kahambiliyawa Vidyalaya/Somawathi Primary School/Patunugama Junior School/Kirimatiya Junior School/Kumudupura Primary School 計11校
活動キーワード被災地域での子どもへの文房具配布
2011年3月
カウンターパートパルシック

2.内戦被災民キャンプでの学用品等の支援(リトル・スマイル・プロジェクト/2009年)

地域ヴァウニア避難キャンプ内の2つの幼稚園
受益者1200名の子ども
活動キーワード内戦避難民IDPキャンプでの子どもへの日用品文房具の配布
各子どもに配られた手提げ袋(スマイルパック)の内容:
絵本、コップ、タオルハンカチ、石鹸、石鹸箱、歯磨き粉、歯ブラシ、くし、手鏡、自由画帳、クレヨン、マーブルチョコ、風船
2009年6月告知 同年11月配布
(※NGOへの圧力を強める政府との交渉に時間がかかりました)
カウンターパートスランガニ基金
スランガニ基金代表 馬場繁子

沢山の方々のあたたかい思いがいっぱい詰まった1200個の赤いバックを11月17日に無事届けることができました。軍隊のトラックでスランガニ事務所からキャンプへと運搬、子どもたちの目を見つめながら、1つずつその手に渡すことができました。
キャンプの子どもたちは、笑顔一杯で、見た目には栄養不足も予想していたより少なかったのでホッとしました。雨期ということで排水による汚水があちこちに流れ、淀んでいて、衛生環境は劣悪でした。
しかし、家庭により、女性の努力により、仮設のトタン住居の周りに野菜を植えていたり、それを使って料理していたりと頑張り面も見えました。女性は強いな、すばらしいなと思いました。すべてのご協力いただきました皆様に心から感謝申し上げます。

スランガニ基金代表 馬場繁子

水問題が深刻化するアヌラーダプラ県の学校への水道設備設置

スリランカ北中部州は、乾燥地帯に属しており、水の確保が昔から大きな課題となってきました。近年は、気候変動の影響でさらに降雨量が減少し、地下水レベルが低下する地域も多くあります。そのような地域では、学校のような公共機関に設置してある井戸でさえ、枯れてしまう事態が発生しています。
 一部の学校では、海外の援助により「深井戸」が掘られ、一定量の水は確保できていますが、この地域ではさらに別の問題が存在します。この地域は「水に含まれるフッ素化合物等の含有量が高く、飲料水として不適である」と専門家からかねてから指摘されています。世界保健機構の調査によると、北中部州ではその地殻成分の影響により、他地域と比べ地下水のフッ素含有量が高く、フッ素が原因とみられる「慢性腎疾患(CKD)」の患者数が、他の地域より際立って多いと発表されています。しかし、他の手段がないため、生徒はその水を飲み続けている現状がありました。

地域スリランカ北中部州アヌラーダプラ県
受益者Gonuhathdanawa学校207名の生徒 / 井戸
8つの学校1294名の生徒 / フッ素除去システム
Gulgodella学校108名の生徒 / 雨水貯蔵タンク
活動キーワード干ばつおよびフッ素汚染地域での井戸、フッ素除去システム、雨水タンクの設置
助成/年国際ボランティア貯金(2010年-11年)
カウンターパートシッダールタ・チャイルド・ディベロップメント・ファンデーション
ケビティゴッレーワ地域健康管理事務所

 活動の開始時に、各地域での水質調査を行い、現状を確認した上で、最低限の安全な水を子どもに提供するために、「井戸がすでに設置されている学校」では、上水用のフィルター(メンテナンスも考慮し地元企業のジナセーナ社の「NEHA MIRACLE」をます採用。一台で1時間に300ℓ~500ℓの処理が可能)を設置してフッ素等を除去することで、より安全な水を確保します。また、「井戸が枯れてしまっている学校」「水確保が難しい学校」では、深井戸の建設や雨水タンクを設置します。さらに、水汚染と健康被害に関する知識の普及、水資源の重要性や保全策、雨水の有効利用、家庭での簡易ろ過方法についても合わせて活動を行います。

1. 地域の学校に、より安全で安定的な水道設備を導入する

1つの「深井戸」、7つの「フッ素除去システム(ジナセーナ社の「NEHA MIRACLE」)」、1つの「雨水貯蔵タンク(サイズ10m×5m×深さ2mの地中埋設式で、雨水が屋根から雨樋を通りタンクに貯水されるシステム)」の設置を行いました。これにより、地域の子どもたちと保護者が、より安全で安定的な水にアクセスできるようになりました。

【井戸】Gonuhathdanawa学校【フィルター設置】Gonuhathdanawa、Parana Halmillewa、Konwewa, Tammennagama、Kumudupura、Damsopura、Mayurapada学校【雨水タンク】Gulgodella学校

2. 水と健康の問題・対応策についての啓発活動

地域の公衆衛生官、医師と連携し、ラジオ放送による知識普及、水環境保全に関するブックレット製作と配布を行いました。これらの活動を通して、水を介する感染症や水汚染の原因、対策等について理解を深めてもらいます。ブックレットの絵については、ワークショップで地域の子どもたちが描いた絵を採用する事としました。

内戦・津波被災地域での子どもの栄養改善とメンタルケアプログラム

バティカロア県ダッチバー村は、スリランカの少数民族タミル人が暮らす村です。スリランカ東部州は、政府とタミル人の25年間に及ぶ内戦の主戦地域であったため、人的及びインフラ資源が衰弱化しました。さらに、2004年12月に発生したインド洋大津波では、366名の人命が失われ、村の全住居が全壊する甚大な被害に見舞われました。計画当時、当該村には86世帯が暮らしていましたが、一家の大黒柱を失った家庭も多く、主産業である漁業の働き手を失った家庭では、生計が困窮しており、村自体の活力も大きく失われています。

 津波被害後には、外部支援により、住宅が建設され、最低限の生活再開が進められましたが、人的リソースの喪失、インフラ設備の不足、さらに、特に子ども世代への津波による肉体的・精神的ダメージの影響は今なお甚大です。多くの子どもは、内戦による恐怖心や津波被災のトラウマを抱え、さらに親を失った子どもはさらに深刻で、精神的な傷に加え、教育機会の低下、貧困に陥ることで、生きる希望を見出せずにおり、栄養状態、衛生状態も低い中での生活を余儀なくされています。

 津波災害から4年が経過し、NGOなどによる支援は殆どが終わってしまったが、子どもの状態は改善しておらず、早急な取り組みが求められています。なお、事業予定地は2008年7月に政府が制圧し、治安や安全性は確保されています。

地域東部州バティカロア県ダッチバー村
受益者参加児童55名
活動キーワード子ども会の設立 メンタルサポート 親の生計向上
助成/年地球市民財団(2009年)
カウンターパートグリーンムーブメント・オブ・スリランカ


1. 子ども会の設立と促進

 55名を対象に、子ども会活動を組織する。基本は子どもが集まって時間を過ごしてもらいつつ、メンタル面の子どもの状態の把握、カウンセラーによるカウンセリングまでを行う「メンタルサポート(精神状態の把握、ゲームによるトラウマ緩和、個別カウンセリング、チームでの発表会実施等)」と子どもが子どもに勉強を教える「相互学習サポート」を2本柱に、精神的なケア、学習環境の整備、子ども同士の思いやりの気持ちをトータル的に向上できるよう活動を行いました。

2. 健康・衛生改善に関する啓発活動

 親を対象に、基礎的なライフスキルの向上を目指して、家庭菜園と連携した栄養改善(栽培方法に加え、野菜料理のメニュー共有)、台所の衛生改善、手洗い習慣の定着などを目指したレクチャーを行いました。

3. 家庭菜園及び養鶏の普及

 子ども会の運営と並行して、子ども保護者を含む、地域住民の希望者に家庭菜園と養鶏の支援(トレーニング修了者への火ヒナの提供)を行いました。6世帯1組のグループを作り、グループリーダー(約14名)を対象としてトレーニングを開催。砂が多い土壌のため、有機肥料等を利用して行う土壌改良の方法、適している根菜類の栽培方法をレクチャーしました。また、外部から牛ふんを投入した上で、台所から出る生ゴミや落ち葉等を使った堆肥作りの方法も同時に教え、継続的な有機肥料の生産とゴミの有効利用を進めると共に、僻地ということで安定的な種の入手の課題もあるため、採種技術の移転を行いました。

マガッレガマ小学校、ガルカダワラ小中学校へ安全な水道設備の設置

 北西部州は貧困率が33.9%と高い上に、国全体の貧困者の17.6%が生活しており、他州と比べて状況がより深刻です(計画立案当時2009年)。また、低所得者への生活保護手当の支給プログラムが政府によって行われていますが、事業予定地域では7割の人がその対象者となっており、事業地は同州の中でも貧困度が高い地域であると言えます。
 マガッレガマ学校では、深井戸があるものの、埋設している鉄製のチューブが錆びており、飲料には適していません。また、ガルカダワラ学校では、飲料水の確保が出来ていないという現状が確認されています。学校関係者と対話を続ける中で、飲料水の問題だけではなく、貧困の問題を根底として、健康全体に関する知識・関心の不足、栄養失調、学力低下等の問題が深刻化している事が分かりました。
この様な背景の下、もっとも重要なニーズの1つである“飲料水”の確保と健康改善に向けた取り組みへの支援が必要であるとの強い要望が関係者からありました。

地域北西部州プッタラマ県ニカワラティヤ郡・コタウェヘラ郡
受益者マガッレガマ小学校、ガルカダワラ小中学校
生徒572名/教師35名
活動キーワード学校の水道設備設置 衛生意識の向上
助成/年公益信託 今井記念海外協力基金(2010年)
カウンターパートサングラマ

カウンターパートのサングラマは、参加型開発を得意とする経験豊富なパートナーNGOであることから、各学校において、保護者が中心となり、住民主体の井戸の建設・貯水タンクの建設を実施しました。業者に委託するのではなく、住民が主体的に建設を進め、オーナーシップが高まると共に、無駄な支出を抑える事にもつなげます。
 また、学校菜園の整備、地域の衛生意識の向上プログラムも同時に行い、地域の公衆衛生官または医師を招いて、当該地域特有の疾病などについての啓発活動と共に基礎健康診断を行いました。その際、子どもに大きな健康問題などが発見されれば、関連機関と調整を行い対応しました。

ティッサカニトゥ小学校校舎修繕と雨水タンクの設置

 ティッサカニトゥワ小学校を初めて訪れた時、予想以上の光景に一体どうやって子どもたちは日々の学習を進めているのか疑問を覚えるほどでした(写真、左上)。校舎は老朽化し建物自体が傾き始めており、水を飲むためにも 100m 以上も離れた所に行かなくてはなりませんでした。また、当学校の置かれた特筆すべき事情は、学校が「僻地」にあるということに加え、2つの行政区のちょうど境界にあたり、“忘れ去られた場所”となっていたことです。その結果、地域の度重なる要望にも関わらず、20年以上も行政や国の責任である学校の修繕等が全く行われていませんでした。僻地の学校等を訪ねる機会も多いですが、この様な不幸な条件が重なった学校の現状に驚きを覚えました。

地域モナラーガラ県タナマルヴィラ郡
受益者生徒110名/教師9名
活動キーワード参加型学校建設 雨水タンク設置 環境教育の実施
助成/年(財)ひろしま・祈りの石国際教育交流財団(2009年)
カウンターパートなし

 1.ティッサカニトゥワ小学校校舎の修繕

校舎の修繕は、計画よりも開始が少し遅れたものの、その後は住民の積極的な関与があり予定通りに進みました。結果として、修繕というよりもほぼ新築に近い形の校舎が完成しました。当初の予定では、“労働力”は村人が提供する事になっていましたが、担当スタッフや学校関係者と話し合った結果、住民に“工賃”も支払う事にいたしました。その背景には、「干ばつよる農業収入の減少」があり、この修繕活動が村人の収入向上につながるであれば良いと考え、予定を変更して“工賃”をお支払いすることとしました。確かに国際協力の現場では、“住民主体”=“労働提供”=“オーナーシップ醸成”というのが定説とされていますが、実際にはそれほど単純な構図ではないということを学びました。
 住民は有償であるがゆえに責任感を持って仕事に取り組み、地域にとってもいい繋がりが生まれました。この一連のプロセスの中で、私たちも地域の実情に配慮する必要性を学ぶことができました。

2. 雨水タンクの新設
 校舎の修繕と同時に建設した雨水貯蔵タンクも計画通りに完成しました。6000 リ ットルを貯蔵できるタンクが完成し、特に暑さが厳しい当該地域で、渇水期における飲料水の確保が可能になりました。また、学校菜園の作物への灌水にも利用できるようになりました。

【フィールドノート】当初の予定では、校舎の『修繕』を行う予定でしたが、予想以上に屋根材の腐食が進んでいたり、基礎部分の内側に亀裂が入っていたりしたため、多くの箇所を完全に作り直す必要が出てきました。その結果、ほぼ『新築』に近い状態への建設となり、塗装を終えるとまさに“新しい校舎”の完成となりました。完成時のセレモニーの際に聞いてみると、「全ての事に対してネガティブ(諦める)だったのが、自分達にも協力してくれる人がいて、挑戦すれば解決できるかもしれない」と思えるようになったとの声を住民から多く聞きました。

アトゥンゴダイシパタナ小学校校舎新築及び環境教育の普及

1986年に学校は始まり、現在、2つの校舎と仮校舎が1つあるが、スペースの不足のため、1つのクラスを2つに分けて使っており、教室自体が不足しています。また、図書館や実験室などはなく、比較的裕福な村の子供は、よい学習環境を求めて離れた街の学校に通っているため、比較的収入の少ない世帯の子どもが通う学校で、教育格差が深刻化しつつあります。

地域北西部州プッタラマ県コットカッチエ郡
受益者生徒110名/教師9名
活動キーワード参加型学校建設 雨水タンク設置 環境教育
助成/年(財)ひろしま・祈りの石国際教育交流財団(2009年)
カウンターパートグリーン・ムーブメント・オブ・スリランカ

1.学校新築による教育インフラの整備

カウンターパートの「グリーン・ムーブメント・オブ・スリランカ」と住民間で、予算の関係、オーナーシップ醸成の観点から、工事作業については、地域住民に可能な限りボランティアで参加してもらう「参加型方式」での建設が決定しました。その配置は親が中心となり組織している「学校発展委員会」が調整しました。内戦の影響で資材価格の高騰、農繁期によるスケジュール調整が難航し、工期が遅れましたが、無事完成しました。

2.環境教育による環境意識向上

地域の学校に対し、C/Pのスタッフが定期的に学校を巡り、基礎的な環境に関するトレーニングを行っています。このトレーニングでは、スリランカの環境問題に加え、「なぜ環境保全をしないといけないのか?」という根本的な問いについて、ディスカッションを通しながら学びを深めてもらうことを目指しています。また、知識だけではなく体で自然を感じることができるように、屋外での活動やゲームも取り入れて、自然に対する感覚を研ぎ澄ますトレーニングも行いました。対象の学校は、1.Athungoda Isipathana、2.Moriyakulama、3.Thonigala Nawa Adarsha、4.Swarnapaliyagama、5.Kottagama、6.Dewalahandiya Jayawardhana、7.Kivula、8.Sohonkalma、9.Karukkumaduwa、10.Hidayannagar、
11.Madyama Attavilluwa、12.Uththara Attavilluwa

子どもの視力検査の実施とメガネ配布によるケア体制の確保

 

「適切な視力検査やケアを受けられないことで、失明など視覚に重大な影響を受けている子どもがいる」。私たちが活動を行っている中部州ヌワラエリヤ県の保健省医官から、何ともショッキングな相談を受けました。
 ヌワラエリヤ県は、スリランカ国内でも貧困者数が最も多い(※当時)とされる中部州にあり、山間部というアクセスの悪さと行政の予算不足が主因となり、教育機関での視力検査の実施率は非常に低い地域でした。さらに調べてみると、適正な処置があれば視覚障害者とならずに済んだ人の割合が88%もあったこともわかり、早期の視力検査と適正な処置が、生徒の健全な成長、貧困の防止に非常に重要である事が明らかになりました。

 政府からは、「子どもの視覚問題は国家レベルで取り組むべき重要な課題である。国家予算の問題上メガネの提供はできないが、必要な技術的・医学的支援を行うので、是非ともヌワラエリヤ県への支援を行って欲しい」との強い要望がありました。

地域中部州ヌワラエリヤ県全域
受益者全生徒数160,000人/特に視覚に問題のある2,000名
活動キーワード全域での視力検査の実施 メガネの配布
助成/年国際ボランティア貯金(2010年)
カウンターパートスリランカ社会福祉省

1. ヌワラエリア県全域の学校での視力検査実施

 ヌワラエリアの生徒数は16万名にも及ぶため、検査を行うマンパワーについて工夫が必要になりました。そこで、ヌワラエリア県の学校532校から1名ずつ学校教員を派遣してもらい、視力検査の道具提供と検査方法を専門家と医師がレクチャーした上で、各校で視力検査を実施しました。

2. 視力に特に問題がある2000名の生徒へのメガネ配布

 視力検査の上で特に大きな視力の問題を抱えている約2000名の生徒に対して、医師の診断に基づき、適切なメガネを配布しました。メガネ提供時には保護者への啓発活動を同時に行い、子どもの成長期において視力の問題を放置することによって失明等の問題が発生し、子どもの将来を奪う危険性を理解してもらいました。一方で、本活動のメガネ提供は、『重篤な子どもへの救急処置的なもの』であり、長期的な観点から、その後の定期的な治療とメンテナンスが肝要であるとの説明を行いました。そのため、子どもの目の状況を常に気にしつつ、メガネが視力の矯正の効用をきちんと理解し、長期的なケアを行う必要性についてもきちんと説明を行いました。

フィールドノート】 メガネの配付後に学校を訪問した際には、子どもたちから感謝の言葉を何度となく聞きました。「視力の回復により黒板の文字が見えるようになった」「友達と走り回ることができるようになった」「頭痛が無くなり学習意欲が湧いた」などの声も寄せられました。また、保健省からも本事業を一つのモデルとして今後ほかの地域でも視力矯正事業を進めて行きたいということで、その協力要請も頂きました。
 現場レベルで仕事をしている地域保健担当医師からは、「特に僻地においては一人の医師がカバーする地域が広く、かつ他の業務もあるため視力検査はいつも後回しにされていた。今回のトレーニングを通して、学校の先生達が基礎的な視力検査を実施できるようになり、それを保健省へ連絡する体制ができたので、子どもたちの視覚問題の早期発見につながる」との感謝の言葉をいただきました。