【記事】大切な道、ふさいでいませんか?~「点ブロスマホ」の危険~(NHK WEB特集記事)
2022.03.31
【出典元】 https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220331/k10013555061000.html
「気づかなかった。無意識だった」
多くの人がそう話していました。
でも、その行為が知らず知らずのうちに視覚障害者を危険にさらしているかもしれません。
スマホを見ながら点字ブロックの上を歩く「点ブロスマホ」。
点字ブロックに頼る人たちは今、かつてない脅威を感じています。
“配慮で成り立つ生活”が崩れた
去年の秋に都内で開かれた、視覚障害者団体の集会。
関係者の間で「点ブロスマホ」と呼ばれる行為の危険性を訴える発言がありました。
「安心安全に歩けるはずの点字ブロック上を、今では多くのスマホを見ている方が歩いてきて私たちの仲間と衝突し、けがをしたり、白杖(はくじょう)が折れたりということが起きています」
都内では去年4月、八王子市で全盲の男性が点字ブロック上で歩きスマホをしていたとみられる人と衝突。
倒れた際に頭を打っておう吐し、救急搬送される事故が起きました。
視覚障害者にとって、危険が多い屋外では点字ブロックと周囲の人の配慮が欠かせません。
しかし、スマホに没頭して前を誰かが歩いていることにすら気づかない人が増え「周囲の人がよけてくれる」ことで成り立っていた生活が崩れてしまったというのです。
その結果、速度を緩めずに歩いてくる人と点字ブロック上で“正面衝突”するケースが相次ぐようになったといいます。
集会に参加した人たちからは
「事故が起きてからでは遅いので常に自己防衛している」
「ぶつかった際に相手のスマホを落として怒られたことがあり、謝ったが納得がいかなかった」
といった声も聞かれました。
「泣き寝入り」せずに済む社会に
点字ブロックは、1967年3月に岡山市で初めて設置され、全国、そして世界へと広まりました。
今月で誕生から55年。
今も変わらず、視覚障害者の生活に欠かせない「道しるべ」です。
「点ブロスマホ」で、かつてない危険にさらされている視覚障害者。
問題を解決するにはどうすればいいのでしょうか。
東京都盲人福祉協会で歩行訓練を担当している早苗和子さんは、まず視覚障害者がその場で声を上げられないことを理解してほしいと話します。
前から歩いてくる人が実際にスマホを見ているのかどうか、判断ができないからです。
このため、ぶつかられても注意できずにやり過ごすしかなく、結果として「点ブロスマホ」をしている側も危険を認識していない可能性があるといいます。
早苗さんは、歩きスマホが問題になっている今こそ、一人一人が視覚障害者の置かれている状況に思いをめぐらせ、相手の立場に立って行動してほしいと考えています。
数年前に屋外用の点字ブロックをスリランカに導入できないか企業から相談を受け、政府機関と調整したことを思い出しました。せっかく点字ブロックという環境を整備しても、「歩きスマホ」という行為で、それをうまく活用できない、さらにそれが事故やけがに繋がるようであれば、元も子もありません。一方で、人々が点字ブロックの存在について、当事者の立場に立って学ぶような機会もあるとよいですね。