【記事】高水温、北海道南部の漁業直撃 特産マコンブにプランクトン付着、サケ漁振るわず / 北海道新聞
2023.10.11
https://news.yahoo.co.jp/articles/d509d5958e5174f64988f87be3847d20e8abb734
猛暑による海水温上昇が、道南の漁業を直撃している。
函館では特産の養殖マコンブに「ヒドロゾア」と呼ばれるプランクトンが付着し、出荷量が減少。日本海や噴火湾沿岸では秋サケ定置網漁が振るわず、地元のイベントでは名物の「サケのつかみどり」が中止に追い込まれた。漁業者らは「死活問題だ」と危機感をあらわにしている。
函館市の津軽海峡沿岸では、高級品として知られる養殖マコンブに「ヒドロゾア」という糸状の海洋生物が付着する事例が相次いでいる。
気象庁によると、津軽海峡の平均海面水温は7月31日で平年より2・8度高い24・5度、8月31日も同3・6度高い27・1度を記録した。地元漁協などによると、ヒドロゾアは海水温が15度を超えると活発化するとされ、コンブに付着後は血管が枝分かれするように全体へ拡大。食べても健康に問題はないというが、見た目が悪くなって等級が落ちたり、付着した部分を切り落として出荷せざるを得ない事態に陥っている。
市小安町の養殖コンブ漁師吉田徹朗さん(73)はヒドロゾアの影響で生産量が例年に比べ3割減少。昨夏も同規模の被害を受けたといい、「コンブ漁を50年以上やっているが、2年連続は初めて」と話す。洗浄機やたわしでヒドロゾアを除去する作業に時間がかかるため、出荷も遅れており「もはや漁業者だけで解決できない問題。行政も一緒に対策を考えてもらわないと、浜が死んでしまう」と訴える。
昨年は1202トンの水揚げがあったひやま漁協(檜山管内、八雲町熊石地区)の秋サケ定置網漁も大不振だ。今季の9月28日までの水揚げは全体で約1トン。同漁協瀬棚支所(せたな町)では9月上旬から秋サケ定置網漁に7隻が出漁しているが、平均漁獲量は1日20~30キロほどという。
同漁協管内の漁業者は「海水温が23~24度と温かく、海水浴ができるくらい。これではサケは寄ってこない。せめて20度まで下がってくれないと」と口をそろえる。9月24日の江差町産業まつりと10月1日の上ノ国町産業まつりは、それぞれ予定していた「サケのつかみ取り」の中止を余儀なくされた。反対側の噴火湾に面した八雲町の落部漁協も9月の水揚げは54匹で、昨年の約900匹に遠く及ばなかった。
鹿部町や八雲町では、養殖ホタテの稚貝を選別する分散作業に遅れが出ている。鹿部町では、例年なら9月中旬までに始まる「本分散」を9月24日に始めたが、同日の鹿部沖の水深10メートルの水温は22度。例年の15~20度より高かったため、稚貝に負担をかけないよう、数量を抑えているという。
鹿部漁協の松川峻佑指導課長は「高温で稚貝が死んでしまえば、来年耳づりを行う貝が足りなくなる漁業者も出てくるかもしれない」と心配する。
お世話になっている皆様に地元海産物を送ることも多いのですが、ここ数年は、北海道近海の海産物の漁獲量や漁獲種の変化が激しく、値段が上がったり、手に入れるのも難しくなってきました。身近な「食の変化」が、気候変動の影響を最も強く感じる瞬間です。
水産業、水産加工業も高齢化や働き手不足の問題が深刻化いるので、これらの急激な環境変化にどうにか適応できるといいのですが(一方で、魚屋に並ぶ魚が養殖ばかりになるのも寂しいですが)…。