プロジェクト背景

被災エリアの諸課題(2011年8月)

 東日本大震災は2011年3月11日に発災しましたが、被害が甚大かつ広域だったこともあり、被災者にとって復興への第一歩を踏み出す拠点となる「仮設住宅」の提供にも長い時間を要しました。
 さらに、「一般的なプレハブ仮設では東北の冬は越せない」という断熱性能の低さに対する懸念が当初からあり、その声を受けて宮城県が行った追加工事に関しても、日程の遅れや施工内容に多くの住民が不満を募らせました。

 また、集団移転の候補地の選定や造成には多くの時間がかかることが予見され、仮設住宅居居住期間の長期化が見込まれています。その点でも、少しでも健康で快適に暮らせる仮設住宅での環境づくりが2011年後半の最重要の課題の一つになっていました。
 そこで私たちは、関西を中心とする建築家チーム、建築学生、多くのボランティアの皆さまと連携し、仮設住宅の総合的な環境改善を実施するプロジェクトを約2年に渡り実施しました。

阪田氏(京都工芸繊維大学)前田氏(京都大学)らによる事前調査

【写真下】左上:仮設住宅窓の結露。右上:玄関ドア裏のカビ(冬期間の結露の影響によるカビの発生)。左下:県の断熱追加工事

アクション

 これから、長期間生活を送らざるを得ない仮設住宅の生活空間を少しでも快適かつ東北の環境に順応したものにできるかは、地域の復興や住民の心身の健康にとって非常に重要な課題でした。そこで私たちは当時大きな問題になっていた「厳しい東北の冬に合ってない仮設住宅が多い」という声を受け、「仮設住宅の住環境改善」活動について計画と提案を行い、「三井物産環境基金」から約2年間の活動資金を得ることができました。
 さらに、被災で住居が不足する中でも、気仙沼市本吉町の各自治会のご協力のおかげで、活動拠点となる場所も構えることができました。

仮設住宅の住環境改善活動の方針としては、事前調査を行った上で、
 ①住環境の性能が低い(特に断熱性能の低い)プレハブ団地を対象にする(ブレハブ住宅の住環境の底上げ、団地間の住環境の差を埋める)
 ②できるだけ入手しやすい材料を使いボランティアでも施工できるように工夫する(適正技術的なアプローチ)
 ③活動で得られたノウハウや成果をできるだけ広く共有する(今後の災害時での活用、仮設住宅のあり方への提言)
の3つの方針を定めて、活動を進めました。

 2011年秋~冬の活動開始時は、「冬対策/結露対策」のような最低限の住環境を整えるというアプローチを行い、2012年以降は、仮設住宅で少しでも楽しく便利に暮らせるアイデアの実証試験、住民の皆さまと交流を促進するような活動も合わせて実施しました。
 これらの知見は、今後の仮設住宅でも活用可能という判断から、当ページで可能な限り情報を掲載し、共有したいと思います。
(※当サイトに掲載している写真、論文や調査記録等の無断転載はお断りしております。あくまでも防災学習や災害対応時での使用に限定させていただきます)

パートナー

京都工芸繊維大学 阪田弘一研究室
大阪大学 甲谷寿史研究室
明石高専 平石年弘研究室
LPA (Lighting Planners Associates Inc. )
前田 昌弘(京都大学工学部建築学科)
酪農学園大学学生ネットワーク(酪ネット)
三井物産環境基金(活動助成)

【協力企業】
川上産業株式会社(プチプチシート/断熱支援)
田島ルーフィング株式会社(屋上緑化ユニット/断熱支援)
有限会社石川テント(ルーフシェード/断熱支援)
スペーシア株式会社(収納ジョイント/収納支援)
田中紙管株式会社(紙管/収納・あかりカフェユニット支援)

東日本大震災被災地復興支援活動「コミュニティ構築支援活動」

実施プロジェクト報告(2012年~2014年9月)

適正技術による内部断熱改善メニュー

プレハブ仮設寒さ対策作業マニュアル「仮設スマイルマニュアル」(2011年12月版)

 2011年9月上旬から、建築学の専門家と全国から集まったのべ500名以上のボランティア、資材メーカーと協働しながら、「より安く、できるだけ簡単にできる仮設住宅の住環境改善(適正技術による住環境改善)」をテーマに、プロジェクトを進めました。
 断熱改善等の寒さ対策の支援対象者は、専門家の調査の上、本吉町内の14の仮設団地の内、断熱性能の低い10団地とし、その中から希望のあった220あまりの世帯に対し、資材提供(一部世帯は資材提供のみ)と施工支援を行いました。
 作業は、宮城県の追加断熱工事が進む中での実施となったため、施工メニューの変更等もありましたが、寒さ・結露対策を中心に、屋外の寒さを内部に伝える鉄柱の断熱テープ貼り、結露がひどい窓への気泡緩衝材(プチプチシート)貼り、冷風が入り込む床と壁の隙間塞ぎ等のメニューを、当会の現地スタッフとボランティアの皆さんの手によって施工しました。
 施工時は、お家に長時間お邪魔することになり、自然に居住者の方との会話や交流も生まれ、現在も居住者の方と連絡を取り合っているボランティア参加者もいます。 
 その後、効果検証の一環としてアンケート調査を実施し、支援受入れ側から評価をいただきましたが、寒さ対策の支援は、一定程度満足感を持って受け入れられたのではないかと判断しています。また、対象者を本吉町全域の仮設住宅にしたことも、支援の偏りを防ぐという点で、行政からの高い信頼に繋がりました。

仮設すまいるマニュアル

東日本大震災のプレハブ仮設住宅で問題が深刻化した「仮設の冬対策」について、できるだけ簡単で安い方法を専門家と考案し、現場で改善を重ねてマニュアル化しました

場所気仙沼市本吉町内の仮設住宅11地区(291戸)
参加者 建築専門家 建築学生 ボランティア
活動キーワード仮設住宅地区での寒さ対策(断熱性能の向上)
2011年秋~2012年冬
パートナー京都工芸繊維大学 阪田弘一研究室
大阪大学 甲谷寿史研究室
明石高専 平石年弘研究室
前田 昌弘(京都大学工学部建築学科)

【メディア掲載】

河北新報「民間支援 行政を補完」/2011年10月20日
北海道新聞「仮設補強 道産子が活躍」/2011年12月11日
建築知識「前へ!東日本大震災 再興への道」/2011年12月号

仮設住宅玄関への庇(ひさし)の設置

 小泉仮設住宅地区の集会所、及び、3カ所の住居に木材と波板で作った庇の試験設置を行いました。庇を設置することで、雨の吹き入れの防止、日差しの緩和、外収納の設置スペースの増加効果に加え、人の交流を促す効果も見込まれます。仮設住宅地区によっては、庇を標準装備している地区もありました。庇の設置は、一定の施工技術が必要なこと、仮設住宅ごとに仕様が異なる状況などがあり、マニュアル化までには至らず試験設置のみとなりました。

場所気仙沼市本吉町小泉仮設住宅地区
参加者 建築学生 ボランティア
活動キーワード仮設住宅での庇の設置
2011年夏
パートナー魚谷繁礼 建築研究所

仮設住宅の緑化と花壇の設置

 仮設住宅は、支援団体や行政によってプランター支援などが行われていますが、緑化できるスペースに限りがあったり、プランターを地面に並べるだけでデザイン性に欠けているなどの声が多く聞かれます。
 そこで私たちは、仮設住宅地区内の集会所で、スリランカ産のココヤシ素材や日本の伝統的な自然資材を活用した「仮設住宅の緑化」に挑戦しました。材料には、ココヤシネット「グリーンカーテンネット」、「麻袋」や「叺(かます)」など袋状の植物繊維を利用した「植物性プランター」、地元で不要になった「竹を利用した柵」を製作し、集会所の壁面を緑化スペースとして有効に活用しつつ、植物が深く根を張れるように多くの土が入るスペースを準備しました。
 また、雨の少ないスリランカでは比較的ポピュラーな屋根から雨を集め貯水する「雨水貯水タンク」も設置し、植物の水に利用できるようにしました。さらに行政から許可を得た上で、集会所の屋根面にも数種類の方式で、折半屋根の緑化(芝桜、キリンソウ、地域内の雑草の3パターンの比較)を行い、雨水タンクから手動ポンプで屋根の植物に水を散布する手動の簡易散水システムと共に試験設置を行いました。
 緑化を行った結果、住民の方が自然に水やりや苗の植え替えをするなど、生活のリズムにちょっとした変化があったり、皆さんの日常会話の話題の中に自然に花や植物の話題が出てくる話題の豊富化といった効果も確認できました。また、1カ月後の雨上がりには屋根に小さな蛙が発生したりと・・・自然の強さを感じる瞬間もあり、共有スペースの緑化することによって多くの効果が確認できました。園芸作業自体にも癒し効果があるため、仮設居住者への支援メニューの一つとしても仮設建設時の計画的に園芸スペースを入れ込むような話も十分ありうると考えています。
 一方で、緑化に興味を持つ方が一部に偏ってしまう点があったり、雨水タンクからの給水方法の周知がうまくいかず有効に利用されなかったなど課題も複数見つかりました。

場所津谷小学校仮設住宅地区
参加者建築学生、ボランティアによる施工
活動キーワード仮設住宅の緑化
2012年春
パートナー明石高専
酪農学園大学学生ネットワーク(酪ネット)

【メディア掲載】神戸新聞「仮設を緑化 夏快適に」/2012年5月5日

窓面の夏対策(すだれやグリーンカーテンの設置)

2012年の春から夏にかけては、仮設住宅の窓面の熱対策として、「グリーンカーテン」と「すだれ」の設置を学生ボランティアと共に順次行いました。

 事務所の屋外スペースに太陽光のエネルギーを最大限に生かす「パッシブ型の温室」を明石高専のご協力で建設し、「雲南百薬(おかわかめ)」、「ふうせんかずら」などのグリーンカーテン苗を栽培しました。
 2012年7月から気仙沼市本吉町の7カ所の仮設住宅地区の62世帯(すだれ設置も含む)と共有スペースに育てた苗を配布しました。
 また、特に朝夕に窓から入ってくる住戸への陽射し対策として、すだれの設置も行いました。すだれの設置では、地元の竹材を加工して留め具を作り、結束バンドや金具を利用し、仮設住宅の雨どいと物干し金具に固定することで、風が強い日でもばたつかず(かつ、巻き上げが可能)、着脱可能な取り付け方法(仮設住宅の原状回復ルールを順守)を開発し、グリーンカーテン同様、希望世帯に設置しました。

場所気仙沼市本吉町仮設住宅地区
参加者 建築学生 ボランティア
活動キーワード仮設住宅でのグリーンカーテン、すだれの設置
2012年夏

屋根面の遮熱施工(遮熱ペンキ、ルーフシェード、緑化)

 県の追加工事で壁面の断熱性能が向上した結果、仮設住宅の夏の暑さ対策としては、屋根面の遮熱性能の向上が重要な課題となります。一方で、「居住期間が2年~3年のあくまでも仮の住まいである仮設住宅のために、どこまでお金をかけて居住性能を高めるか?」「専門業者だけではなく、安全を確保した上で、居住者やボランティアでも施工できるか?」という問題も検討が必要になります。
 それらの議論の材料とすべく、行政からの許可を得て、屋根の遮熱効果が期待できる複数の技術について、本吉町内の4カ所の仮設住宅の集会所(小泉中仮設、天が沢仮設、津谷小仮設、旧農改センター仮設)の屋根面に施工し、効果検証を行いました。 
 今回の比較実験では、①直置き工法の緑化、②パネル工法の緑化、③遮熱ペンキ、④ルーフシェード(日陰シート)の4つのパターンで、継続的に屋根温度をモニタリングすることで断熱効果、また、施工の容易さ、コスト面も検討しました。また、耐久性やメンテナンスも可能な限りモニタリングしながら、各工法の検証を行いました。

場所小泉中仮設、天が沢仮設、津谷小仮設、旧農改センター仮設住宅地区集会所(4か所)
参加者建築士 研究者 建築学生
活動キーワード仮設屋根の断熱性能の検証(緑化、遮熱ペンキ、ルーフシェード)
2012年春~
パートナー京都工芸繊維大学 阪田弘一研究室
大阪大学 甲谷寿史研究室
明石高専 平石年弘研究室
田島ルーフィング株式会社(屋上緑化ユニット)
有限会社石川テント(ルーフシェード)

仮設住宅への地元材ウッドデッキの設置

 2013年の仮設住宅の住環境改善プロジェクトは、共有スペースの充実化を目指し、地元の森林組合と連携し、小泉中学校仮設住宅と学校グランドの境界に当たるスペースに、地元の杉材を利用したウッドデッキを製作しました。
 敷地の樹木を生かしたデザインにしたことで、日常の景色にもすぐになじみ、日中には子どもや高齢者が自然に足を運びます。また、テニスコートに隣接するため、部活の様子を眺めることもでき、ウッドデッキのおかげで、仮設住宅の暮らしと学校の暮らしが少し近づいたような効果があったようです。
 ウッドデッキに加え、京都工芸繊維大学 多田羅景太研究室のご協力を得て、子どもでも組み立てられるオリジナルの地元材の椅子とテーブルを製作し、地域のお祭りなどでも活用していただきました。

場所小泉仮設住宅地区
参加者建築学生 ボランティア
活動キーワード仮設住宅地区での地元材のウッドデッキ設置
2013年春
パートナー京都工芸繊維大学 阪田弘一研究室
京都工芸繊維大学 多田羅景太研究室
明石高専 平石年弘研究室

【メディア掲載】 京都新聞掲載記事「気仙沼の仮設に交流のデッキ」/2013年6月14日

仮設住宅での夜の交流イベント「あかりカフェ」の実施

 2012年には、照明計画の世界的デザインチーム「LPA」とあかりカフェのプロジェクトを開始。当事業は、「被災エリアや仮設住宅で「あかり」という立場から、何かできる事はないでしょうか?」というLPAからの問いかけから始まりました。この問いを一緒に考えるべく、仮設住宅の建築チームも加わり、話し合いや現場の視察を続ける中で、「ホストコミュニティも含めて、仮設住宅地区で夜に屋外で開催できる交流企画はできないか?」という提案が上がり、夜の移動式の交流空間をデザインする「あかりカフェ」プロジェクトが始動しました。
 あかりカフェは、オリジナルの移動式ユニットになっており、少人数で簡単に組み立てと片付けができ、フード&ドリンクカウンター、三角コーンとプラパール(川上産業株式会社製造の硬質プチプチ板)で作られたコンパクトな椅子やテーブル、ランタン、光の楽しい仕掛け、プロジェクターで地域の景色が映し出されるスクリーン、影絵遊びスクリーンなどで構成されています。

 あかりカフェの第1回目は、山田大名仮設住宅地区で開催。当日は、LPAのあかりデザイナーと学生ボランティアが中心となり、「あかりワークショップ」を行い、地域の子どもと一緒にオリジナルの行灯を製作。夕方になると、美しいあかり空間に、仮設住宅に暮らす皆さまとホストコミュニティの皆さまも加わり、夏の夜に食事と会話がはずむ、そんな楽しいひと時を過ごすことができました。
 その後、複数の仮設住宅地区でもあかりカフェを開催。自治会の夏祭りでもあかりカフェキットが活躍し、「いしのまきあかりシネマ」企画に繋がっていきます。

 あかりカフェ、いしのまきあかりシネマ詳細は、アプカス東北復興コミュニティページに記載しています。

場所仮設住宅地区
参加者仮設住宅で暮らす皆さま
地域住民(ホストコミュニティ 自治会)
活動キーワード仮設住宅地区で「夜」に開催できる移動式の「交流空間」のデザイン
2012年~
パートナーLPA (Lighting Planners Associates Inc. )
京都工芸繊維大学 阪田弘一研究室
谷本天志(美術デザイン)
川上産業株式会社

 

DIYによる内部収納および外部収納の改善

 仮設住宅での暮らしでは、いかに限りあるスペースで無駄なく収納するかという点も快適性に考える上で、欠かせない視点です。
 私たちは、DIYやボランティア支援という視点から、ジョイントと紙管を組み合わせたオリジナル収納について検討を行い、仮設住宅の収納に合わせた4タイプの収納デザイン案を考案しました。
 なお、内部収納支援については、仮設住宅の入居前に一斉に行うのが最も適しており、支援タイミングの調整が重要になる支援メニューとなります。また、強度の点でも課題がありました。特に湿気が高い時期なども考慮し、紙管の強度改善(特に紙管の強度や口径の調整)が重要になりそうです。一方で、限られた収納スペースを有効活用する視点、居住者が仮設を住みこなしていこうとする関係性の視点、退去時に処分しやすい等の利点があるため、仮設収納をDIYするという視点は、重要なテーマであると考えています。
 外部収納についても、屋外の収納スペースやプランターなどの設置を目指し、塩ビ管を使用したDIY収納を考案しました。仮設住宅の外空間をより快適にすることは価値のある支援メニューであるものの、塩ビ施工の精度が要求されること(細い口径の塩ビ管は歪みが発生しやすい)、同じく強度の問題等があり、デザイン考案と試験設置に留まりましたが、京都工芸繊維大学の学生らが考案してくれたデザイン案については広く共有する意義があると考え、データを掲載することとしました。

場所仮設住宅地区
参加者仮設住宅で暮らす皆さま
ボランティア
活動キーワード仮設住宅内外でスペースの有効活用に資するDIY収納づくり
2012年~
パートナー京都工芸繊維大学 阪田弘一研究室
石川 達也 小柳元樹(デザイン施工管理)
スペーシア株式会社(収納ジョイント)
田中紙管株式会社(収納紙管)

紙管を利用したDIY収納案(内部収納)

紙管とジョイントを使って、有効スペースを活用できる4種類の押入れ収納のフレームを考案しました。

塩ビ管を利用したDIY収納案(外部収納)

紙管とジョイントを使って、有効スペースを活用できる4種類の押入れ収納のフレームを考案しました。

ゴミステーションの改善

 仮設住宅のごみステーションの敷地内にあるごみステーションは、単管などを組んだだけのもので、利便性が低く、カラス被害などが発生し、衛生上の問題になっていました。そこで、災害ごみの廃材(柱や梁などの角材)と波板を利用して、できるだけ簡易的な方法でごみステーションを改善する方法を模索しました。ごみステーションの改善は、比較的簡単にできる建築支援なので、仮設住宅支援の1st stepにもよいメニューであると思います。

場所本吉町仮設住宅地区
参加者ボランティア
活動キーワード仮設住宅地区でのごみステーションの改善
2011年冬
パートナー酪農学園大学学生ネットワーク(酪ネット)
池田尚弘(元東京農業大学講師)

ごみ集積場改善プロジェクト~仮設住宅地区の共有スペースへのアプローチ~

仮設住宅地区のごみステーションの改善を廃材を活用して、学生ボランティアが中心に実施しました。(報告者:駐在員/大崎 美佳)

※ゴミステーションの形は、設計上の規格は特にないようで、バリエーションがありました。そのため、設計図は役立たないかもしれませんが、ゴミステーション改善のエッセンスがお伝えできるように報告書データを共有します。

共同農園の開設と運営

 当プロジェクトでは、仮設住宅に暮らす方を対象として、町の中心分に土地を借り受け、10区画(1区画:7m×4m)の共同農園をボランティアの手によって整備しました。この土地は、畑の土ではなく、住宅用の基礎に使われる盛り土がされており、農園として整備するには、石を取り除き、土壌改良し、2カ月ほどかけて農園の整備が進みました。

 10区画中7区画が参加者に貸し出され、作物の栽培がスタート(使われない区画は団体側で栽培しました)。草刈りや貯水タンクへの水の補給などで、多くのボランティアが共同農園に足を運んでくれ、そこで参加者や近隣住民のみなさんと立ち話をしたり、作業をしたりする光景も多くみられました。

 2012年秋に、プロジェクト評価の一環として、参加者のみなさんにヒアリング調査を行った際には、「共同農園が外に出るきっかけになった」「共同農園が体を動かす機会になった」「交流やコミュニケーションを取るきっかけになった」という声があり、元々家の周りで畑をしていた人に、自分のやり方で農作業をしてもらい、収穫した作物を人に分けるといった被災前から当たり前にしていた「自分で育てた野菜を食べる&人にお裾分けをする文化」を多少なりとも取り戻してもらうきっかけになったのではないかと考えています。

場所気仙沼市本吉町仮設住宅地区
活動キーワード仮設住宅居住者向けの共同農園の実施
2012年春~
パートナー酪農学園大学(酪ネット)
明石高専
その他多数のボランティアの皆さま
赤い羽根共同募金会(活動助成)

共同農園プロジェクト~被災エリアでの農園整備の実践を通して~

駐在員の堀池が中心に取り組んだ被災エリアでの農園整備事業の報告です。その試行錯誤の日々に、農園支援のエッセンスが含まれている内容です。(報告者:駐在員/大堀池 舞子)

仮設住宅法面の補修

 活動地の一つの仮設住宅地区で、造成後1年も経たないうちに雨のたびに造成した土が流出する事態が発生しました。今回の仮設住宅は、丘陵地に急いで造成された地区も多く、造成後の地盤の保守までは手が回らないという状況であったため、緑化に使用したココヤシロープや土嚢をって明石高専の学生が、応急措置の法面補修を行いました。仮設住宅地区の2次災害の防止の視点からも、法面保守は重要な確認項目です。

場所気仙沼市本吉町仮設住宅地区
活動キーワード仮設住宅地の法面補修
2012年夏
パートナー明石高専

仮設住宅地区での交流企画

 当会の活動には、2011年の緊急支援以来、学生、専門家、一般ボランティア含め、ゆうに1000名を超えるでしょうか・・・国内外からたくさんの方々が活動拠点を訪れ、寝食を共にしながら、有形、無形の力を貸しててくれました。受け入れでは、至らない所もあったかと思いますが、本当にありがとうございました。その中で、下記のイベントや交流企画を実施しました。特にボランティアとして訪れた学生と地域住民の皆さまの交流は、お互いに刺激の多いかけがえのない時間になったようです(笑)

1.「作って食べよう」企画
 仮設住宅に暮らすお母さんが学生ボランティアを対象に、料理教室を開催して、一緒にご飯を食べる企画。数々の地域食、おふくろの味が再現されました。

2.マンボウ石釜で移動式ピザ会
 本吉町のシンボル、マンボウの形をした石釜を製作。地元の薪を使用して、移動式のピザ会を実施しました。寒い中で一緒に作ったピザを頬張る。味も大好評でした。

3.あかりワークショップ (with LPA)
 あかりカフェの一環として、子どもを対象に手作りのLED行灯を製作し、会場に飾られました。地域のお祭りとも連携して、お祭りを盛り上げました。

4. 糸つむぎワークショップ(with Earth Cover)
 札幌市のEarth Coverと協働で、仮設住宅で毛糸から糸を紡ぐ「糸つむぎワークショップ」を開催しました。

5. 酪農学園大学学生ネットワークのボランティアの受け入れ

『軌跡』(酪農学園大学学生ネットワーク活動報告書/2013年3月)

酪農学園大学の学生グループが、東日本大震災の現場(チャイルドファンド/大船渡、アプカス/石巻&気仙沼)に学生を1年半近く派遣し続けたプロジェクトの報告です。大変な災害に遭遇した学生時代だったと思いますが、駐在員含め、現場で真摯に頑張ってくれました。災害の対応が世代を超えて受け継がれ、次の世代に繋がっていく期待も含めて、受け入れ団体として、アプカスからも文章を寄せました。

調査研究成果

当活動の特徴は、実務者と研究者が同じ目標を目指しつつ、研究者自身もアクションリサーチとして積極的にボランティアとの連携支援活動に加わっていただきました。その中で、建築技術(建築学、環境工学)のマニュアル化や関係者へのインタービュー(コミュニティ論)を通して、技術の記録や現地の皆さまの受け入れ支援の評価について分析を行いました。これらの知見を今後の防災や効率的な支援の一助となるように当サイトを作成し、成果を共有いたします。

応急仮設住宅の屋内環境改善のための支援技術

当活動「仮設住宅の住環境改善活動」を通して、プレハブ仮設の断熱改善を中心とした支援メニューの方法と効果を技術的な側面から記録・検証した研究

主査:阪田弘一 山隈直人 前田昌弘 魚谷繁礼

津波被災者への居住支援と”信頼構築”の関係に関する研究~気仙沼市本吉町における実践を通じて

当活動「仮設住宅の住環境改善活動」の中で、多くの団体やボランティアが関わった断熱支援活動の情報プロセスを調査し、「信頼構築」の観点から検証した研究(住総研研究選奨受賞研究)

主査:前田昌弘 石川直人 伊藤俊介

※研究や調査記録については活動終了時のもので、その後、改訂されているものもあります。詳細については各研究の主査にお問合せください。

毎日忙しい日々でしたが、沢山の事を学ぶことができ、充実した時間でした。
参加していただいた皆さま、地域の皆さま、ありがとうございました。