【Voice】増改築の多様さにみる文化の結び目としての長屋

【20150320 長屋再生の現場から⑤ 増改築の多様さにみる文化の結び目としての長屋】

 1883年に設立されたと言われるバウラーナ村の紅茶プランテーション。1980年頃に紅茶プランテーションが閉鎖された後も存続する長屋群は130年以上の歴史を持っています。130年の居住の歴史のなかで、長屋には社会や生活の変化にあわせて様々な増改築が施されています。

 例えば、写真の長屋のお住まいは、元々は一住戸(ヴェランダと個室の計2部屋)だったものを、3代にわたって増改築を繰り返し、隣接する住戸とつなげて拡大しています。ごらんのように、部屋ごとに雰囲気ががらっと異なっており、一見すると同じ家族の住まいとは思えません 笑。

 イギリス植民地政府が残した石造の壁に対して実に様々な方法で手が加えられています。既存の壁を取り除く、新しい壁を付け足す、既存の壁の開口部をふさぐ、といったやりかたに加え、今回、特に興味深いと思ったのは、既存の壁や床の表面の仕上げの多様さです。例えば、壁は既存のままで、表面のみセメントやペンキなどの化学材料を用いた現代の塗装に替えることで、既存の壁は変更せずに最低限のメンテナンスで空間を更新しています。

 一方で、140年前当時からつづく、牛糞の土間としっくい塗りの壁、という仕上げも現在も多くの住まいで続けられています(宗教上、清浄な空間であり、かつ煙などで汚れやすい台所付近には伝統的な材料による仕上げが多い印象があります)。新旧どちらの仕上げ材料であっても、塗り直しは頻繁に行われているそうで、これはタミルの人々の信仰(宗教の儀礼や人生の節目ごとに住まいなどを清める)と深く関わっているそうです。

 イギリスの建築文化、タミル人の信仰と生活文化、バウラーナ村の環境、これらがミックスされて凝集された場所が長屋の建築なのです。こんな建築には世界中見渡してもなかなかお目にかかれないのでは!?と思いはじめた今日このごろ。

そして、いま日本から我々がこの建築に関与しようとしているのです。これから何が起こるか、ちょっとワクワクしてきませんか 笑!(前田)